全国の鉄道会社で発覚!「安全にかかわる数字の不正」バレずにいたらどれだけヤバかった?

車軸・車輪の厳格な基準、じゃあ違反するとどうなる?

 一応、車輪や車軸の製造時に発生するばらつきを許容するため、基準値に対して90%~110%の幅が認められていますが、作業を実施する事業者では、それより厳しい基準を設定している場合もあります。

 では、定められた値から外れてしまうと、どうなるのでしょうか。挿入時の圧力が小さければ、車軸と車輪を固定する摩擦力が足りず、走行を重ねるうちレールからの圧力などによって車輪がずれ、脱線につながる恐れがあります。

 逆に圧力が大きかった場合はどうでしょうか。今度は挿入時に無理な力がかかり、はめ込む部分が削れてしまったり、車軸や車輪に“ひずみ”が発生したりする恐れがあります。

 そのまま放置して走行を重ねると、削れてしまった部分や、ひずみが発生した部分には想定を超える力が集中し、金属疲労からヒビが入ります。このヒビが広がると、最終的に車軸が折れたり、車輪が割れたりして脱線につながります。

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貨物車の車輪のアップ(画像:写真AC)。

 新山口駅構内で脱線した機関車の車軸が折れており、車軸取り付け時の圧力値が正常なものに差し替えられていたという事実は、車軸を挿入する圧力が基準から外れていた影響と考えることもできます。通常、想定していたものとは異なる力が、車軸にかかっていたのかもしれません。

 今回、各社から発表された事案について、深刻なのは「基準未満はともかく、基準をある程度超過している分には問題ない」と担当者が考えていたことです。このことが少なくとも10年ほど続いていたということは、作業にあたっていた担当者個人ではなく、職場での共通認識だったことがうかがえます。
 
「安全は何よりも優先される」まさしく「安全第一」であることに、異論はないでしょう。

【了】

【現代の貨物列車で見かけなくなったものとは?】

Writer: 咲村珠樹(ライター・カメラマン)

ゲーム誌の編集を経て独立。航空宇宙、鉄道、ミリタリーを中心としつつ、近代建築、民俗学(宮崎民俗学会員)、アニメの分野でも活動する。2019年にシリーズが終了したレッドブル・エアレースでは公式ガイドブックを担当し、競技面をはじめ機体構造の考察など、造詣の深さにおいては日本屈指。

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