超~~~長い「伝説のロングシート」とは? 各地のラッシュ輸送を担った「座席と吊革だけの動くハコ」が造られたワケ
豪華客車も容赦なく「ロングシート化」!?
さらに1960年代後半からは、戦後にGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の要望で製作されたリクライニングシート付き2等座席車(特ロ<とくろ>)も、東海道新幹線開業に伴う急行列車削減の波を受けて用途を失い、通勤用客車の改造種車に供出されるようになりました。
このような経緯で誕生した通勤用客車はすべて「オハ41系」に分類されて、100両に満たない両数が北海道を除く全国各地に配置。播但線・吉備線・姫新線・伯備線・津山線・小松島線(廃線)・予讃本線(現・予讃線)・草津線・七尾線・東北本線・奥羽本線などで、通常のクロスシートの客車に混ざって使用されました。
形式的にはオハ41系として一括りにされていましたが、戦前のオハ35系からは「オロ36」「オロ40」「オロ41」、戦後のスハ43系では「スロ51」「スロ52」「スロフ52 」「スロフ53」など改造種車の種類がとても多かったため、種車によって外観が異なっていたことも特徴でした。
ではオハ41系客車は、どのようにして通勤用客車としてラッシュ対策を行ったのでしょうか。
とにかく「ロングシートだけ」 果ては「ロングシートもない」も!?
その方法は、車内に並んでいたクロスシートをすべて撤去し、ロングシート化するという極めてシンプルなものでした。
しかし、ドアは改造前と同じように車両端に設置されたままだったので、車内に入ると、全長15m以上はあろうかという驚くほど長いロングシートが窓を背に置かれている……という変わった光景を作り出していました(実際には、数名ごとにシートは分割されていましたが)。
国鉄およびJR国鉄車両には、123系電車やキハ54形0番台など、他にも「超長いロングシート」車が存在しますが、車両の全長に対するロングシートの長さ比率という面では、オハ41系はトップクラスだったのではないでしょうか。
なお、文中で「通勤形客車」ではなく “通勤用客車“ と記したのは、厳密には旧型客車に通勤型という区分がないためです。
通勤用の客車としては、ほかにも和田岬線で使用されていたオハ64系も個性的でした。こちらは逆に「車内にほとんどシートがない」「車体の真ん中に増設したドアが片側にしか無い」など、さらに特徴的な姿をしていました。
※ ※ ※
優等列車用で高い等級の車両として華々しく生まれながら、末期は通勤用客車として各地で多くの乗客を運んだオハ41系に、数奇な運命を感じずに入られません。オハ41系は昭和40年代末から早くも廃車がはじまって昭和50年代には急速に姿を減らし、最終的には1985(昭和60)年にすべて廃車されています。
オハ41系はすべて解体されて残存していませんが、改造種車の一種だったスロ52形は、北海道・美瑛で居酒屋に改造されて現存しており、今なお外観の雰囲気を感じることができます。
【了】
Writer: 遠藤イヅル
1971年生まれの自動車・鉄道系イラストレーター/ライター。雑誌、WEB媒体で連載を多く持つ。コピックマーカーで描くアナログイラストを得意とする。クルマは商用車や実用車、鉄道ではナローゲージや貨物、通勤電車、路面電車、地方私鉄などを好む。
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