『ガンダム』の軍用機なぜ古臭い? 戦いに不向きなデザイン「窓なんて飾りです」の意図も
日本を代表するロボット作品『機動戦士ガンダム』には多くの軍用機が登場しますが、そのほとんどが古臭いデザインです。その理由のひとつが窓枠の多いキャノピーではないでしょうか。しかし、実は大きな意味がありそうです。
コックピットの視界、悪そうじゃない?
アニメ『機動戦士ガンダム』には、人型機動兵器「モビルスーツ(以下MS)」だけでなく、数多くの航空機が登場します。ガンダムのコックピットを兼ねる「コア・ファイター」や、増加ユニットを装備し劇場版で活躍した「コア・ブースター」などのほかにも、戦闘攻撃機「フライ・マンタ」、対潜哨戒機「ドン・エスカルゴ」、爆撃機「デプ・ロッグ」などです。一方のジオン軍でも戦闘機の「ドップ」を始め、偵察機「ルッグン」、MSを搭載して飛行できる爆撃機「ドダイYS」などがあります。
これらは脇役といえる兵器ですが、それでもこれだけのバリエーションと存在意義を持たせているのが、『機動戦士ガンダム』の魅力だといえるでしょう。ただ、筆者(安藤昌季/乗りものライター)はこれら航空機のデザインを見ていて「ミノフスキー粒子による有視界戦闘を強いられる航空機」なのに、「どうして多くの機体で視界が悪そうなデザインなのか」と疑問に思いました。
現実の航空機も、黎明期こそガラスなどの覆いがない、吹きさらしの解放型が主流でした。しかし、高速化にともない、ガラスやアクリル製のキャノピー(風防)で囲まれるようになっていきます。ちなみに、全周囲に視界が確保された「バブル(水滴型)キャノピー」は、1936年のドイツで試作されたHe112Bで、ほぼ完全に周囲が見える形状となりました。旧日本海軍の零式艦上戦闘機(零戦)も、こうした枠を持つバブルキャノピーを備えた代表的な機体といえるでしょう。
この頃はまだ、曲面で構成された一体成型の大きなアクリルキャノピーを大量生産することが難しかったため、風防は窓枠を多くしてガラスもしくはアクリルをはめ込んでいく必要がありました。しかし、製造技術の進歩により第二次世界大戦中期以降は、アメリカを中心に窓枠の少ない大型のアクリルキャノピーが多くの機体で採用されるようになっていきます。
理由は、窓枠が少ない方が、枠の多さで視界が制限されることが減少するからです。
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