「新理論で戦闘機作るぞ」→米空軍「いらん」→まさかの大逆転! 『トップガン』に出た戦闘機誕生経緯

アメリカ海軍などで採用され、映画『トップガン マーヴェリック』でも登場するF/A-18「ホーネット」戦闘機はどのように生み出されたのでしょうか。その経緯は、ほかの戦闘機とは少々異なるものでした。

米空軍「ウチはいらんな」から一気に逆転?

 アメリカ軍は当時、最新鋭のF-4「ファントム」戦闘機が、ベトナム戦線上で小型軽量かつ簡素な、ソ連製ミグ17やミグ21を相手に手を焼いていました。さらに1967年、ソ連(現ロシア)はモスクワで行われた空港ショーにミグ23やミグ25など複数の新型機を登場させたのです。

 こうしたなか対応を迫られた国防総省が急いで開発したのが海軍のF-14と空軍のF-15でした。

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F-16の試作機「YF-16」(画像:ロッキード・マーティン)。

 2機種はともに、高度な飛行性能に加え強力なレーダーと重武装を備えたハイスペック戦闘機として仕上がっていました。しかし、「E-M理論」を追求した設計とはいえず、ボイドやクリスティーなど「戦闘機マフィア」達が満足するものではありませんでした。

 そこで「E-M理論」を積極的に取り入れたアメリカ空軍むけ軽量戦闘機コンペが軽量戦闘機計画として実施されることになりました。各社の提案の中から2機種が選ばれ、ジェネラル・ダイナミクス社(現ロッキード・マーチン)とノースロップ社に試作機が発注されました。完成した機体はそれぞれYF-16とYF-17として飛行試験が開始されましたが、両機ともに優秀な飛行性能を示します。

 両機の共通点として、ともに主翼の前縁から胴体側面にかけて「ストレーキ」または「LEX」と呼ばれるヒレを備えていることです。このおかげで機首を上げて迎え角を増やすと主翼上面に発生する渦流により失速を遅らせ揚力を増やす効果があります。

 しかし、空軍は高価なF-15と並行して導入する戦術戦闘機としてYF-16を採用し、これがF-16「ファイティング・ファルコン」へとつながりました。

 こうして空軍に採用されることなく、いうなれば敗者となってしまったYF-17ですが、運命の女神は思わぬ形で同機に再浮上のきっかけを与えます。

 空軍とは別に、当時アメリカ海軍では部隊配備を進めていたF-14の価格高騰が問題になっていました。すべての戦闘飛行隊をF-14に置き換えるには予算が不足していたのです。

 そこで海軍は、空軍機としては不採用に終わったYF-17をベースに、空母からも運用できる艦載機仕様とした戦闘攻撃機を開発しF-4戦闘機部隊とA-7攻撃機部隊の両方を置き換えることにしました。このとき、白羽の矢が立ったのが前出のYF-17です。

 空軍機として設計されていたYF-17を、空母艦載機として運用可能なように仕立て直し、所要の改造を加える形で生まれたのがF/A-18「ホーネット」でした。こうして生まれた同機は、F-14「トムキャット」のみならずA-6「イントルーダー」攻撃機の後継としても使える万能機、いわゆるマルチロール機へと昇華しました。その結果、その性能に満足した海軍では、さらなる発展型を要求するようになり、F/A-18E/F「スーパーホーネット」誕生のロードマップができあがりました。

 なお、この過程で機体メーカーはノースロップからマクドネルダグラス、そして現ボーイングへと変更しています。

 YF-17の初飛行から今年(2024年)でちょうど50年、現在では電子戦機も含めて海軍の艦載機はほぼすべてが「ホーネット」シリーズという陣容になり、いまや日本をはじめとして世界中でよく見られる傑作戦闘機にまでなっています。

 アメリカ海軍では現在、F-35C「ライトニングII」の導入が進めていますが、同機の運用はまだ始まったばかり。当分のあいだはF/A-18シリーズの活躍が続くのは間違いないでしょう。

【了】

【写真】違いわかる? これが「F/A-18」試作機の全貌です

Writer:

航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事

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