『トップガン』の重要シーン→実はF-14戦闘機の“2つの弱点”を再現!? 結構マズい「あるある」だった件

ひとつ目の問題は「世界初のスタイルが採用されたエンジン」

『トップガン』に登場するF-14「トムキャット」は初期型の「F-14A」です。このモデルに搭載されているエンジンが、1つ目の欠点の由来です。
 
 F-14Aの搭載エンジン「TF-30」は世界初のスタイルが採用されていました。それまで、超音速機のジェットエンジンといえば、エンジンで取り込んだ空気をすべて圧縮・燃焼する「ターボジェットエンジン」で、これに「アフターバーナー」と呼ばれる再燃焼装置を付けることで推力を増加させて超音速飛行を可能にしていました。ただ、これでは燃料消費が多く航続距離や兵器搭載量に制限が生じます。

 そこで考えられたのが、取り込んだ空気の一部のみを燃焼・圧縮することで低燃費・高出力を実現した「ターボファンエンジン」にアフターバーナーを組み合わせるというもの。こうして生まれたのが、世界初のアフターバーナー付きターボファンエンジンであるプラット・アンド・ホイットニー「TF-30」でした。

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エアショーでデモ飛行するアメリカ海軍のF-14A「トムキャット」(細谷泰正撮影)。

 ところが、 TF-30を最初に搭載したF-111戦闘爆撃機で、課題が判明します。

 TF-30は、エンジンが吸い込む気流の乱れに敏感でコンプレッサーストールが起きやすかったのです。そのため、F-111では空気取り入れ口の形状を変更するなどの方法で解決しようとします。

 ただ、これはあくまでも小手先での対処法で、根本的な問題の解決にはなっていないため、TF-30には依然としてコンプレッサーストールの懸念は残り続けました。しかし、F-14Aにはそのまま搭載されることになったのです。

 なぜ、米海軍はTF-30の抜本的な改良や、もしくは新エンジンへの換装を待つことなくF-14Aの運用を始めたのでしょうか。それは、当時の米ソ対立が大きく影響していたからです。1960年代後半、ソ連(現ロシア)は複数の新型戦闘機を登場させました。米海軍は、それら新型戦闘機に対抗できる機体を持っていなかったため、F-14の実用化を急ぐ必要に迫られました。

 そのため、F-14は段階的に改良して配備する手法が採用されています。当初のプランでは、F-14AにはTF-30を搭載し、次に生産するF-14Bでは新型エンジンを開発して搭載する方針が計画されました。しかし、新型F401エンジンを搭載したF-14Bは初飛行こそしたものの、コストと信頼性の問題で新型エンジンの採用は取りやめとなってしまいます。

 こうして、操縦性にクセのあるTF-30エンジンが使い続けられることになったというわけです。

【写真】なんか機首に…ある! これが「激レア仕様のF-14」です

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