『トップガン』の重要シーン→実はF-14戦闘機の“2つの弱点”を再現!? 結構マズい「あるある」だった件
2つ目の課題は「操縦特性」…最終的には解決も
そして、F-14はエンジン以外にも、別の問題を抱えていました。
それは気流に対する迎角を大きくとって飛行しているときに旋回などで機体を傾けると、方向安定性が不足してスピンに入りやすいという点でした。これは飛行性能に大きく影響し戦闘機としては重大な問題であると同時に、実際にこの問題が原因とみられる事故により、複数のF-14と乗員が失われています。
事態を重く受け止めた海軍は徹底的な原因究明と対策に踏み切ります。その結果、判明したのがF-14の翼型の構造に起因する問題でした。
VG(可変)翼機ではロール(機体を横に傾ける)制御を行う補助翼を主翼に取り付けることができません。そのため、スポイラーと水平尾翼の差動でロール制御を行っています。この制御系統に原因が隠れていたのです。最終的には、製造元のグラマンとNASA(アメリカ航空宇宙局)によって設計変更を行った試験機を製作し、212回の飛行試験を実施するなどして、原因究明がなされ対策しています。
しかし、その成果が実機に反映されたのは1999年から部隊配備が始まったF-14D、通称「スーパートムキャット」からでした。つまり、前作の「トップガン」が公開、上映されていた1986年当時、F-14にとってスピンの防止とスピンからの回復は切実な問題だったといえるでしょう。
こうして誕生したF-14Dは、「トムキャット」シリーズの最終生産型となったモデルで、NASAの研究成果を盛り込んだ飛行制御システムに加え、エンジンも強力でコンプレッサーストールの問題も解決したF110エンジンを搭載しました。さらにグラスコックピットなど最新の電子機器が導入されるなど、2つの課題を解決できた「決定版」だったわけです。
その仕様と性能は「スーパートムキャット」の名に相応しいものでしたが、同時期に生産されていた安価で多用途性に優れた F/A-18「ホーネット」を相手にした場合、予算獲得の戦いでは苦戦を強いられます。結果、F-14Dは少数生産に終わり、その活躍も短期間にとどまりました。
【了】
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