巨砲積むのに弱そう!? 激レア「攻撃力に全振り」戦車なぜ誕生? パッと見 “チョロQ”
対戦車戦闘用の砲弾も開発
QF4.5インチ榴弾砲は、砲弾と薬嚢(やくのう)を別々に装填する分離装薬式だったため、発射速度は一般的な戦車よりも遅いものでした。榴弾の射撃はこれでもよかったのですが、戦闘の推移が速い戦車戦などに巻き込まれると、榴弾砲搭載のため大型化した砲塔のせいでBT-7が持つ本来の快速性が失われていただけでなく、トップヘヴィーで走行性能も悪かったとか。加えて装甲も薄かったため、防御力も低く、そういった点から苦戦せざるを得ませんでした。しかしそれでもQF4.5インチ榴弾砲には、HEAT(成形炸薬)弾が用意されるなど、対戦車戦闘もある程度考慮されたようです。
なお、乗員は操縦手、車長兼装填手、砲手の3名で、同軸銃や車体銃といった副武装は備えていません。そのため、車内には銃眼から撃つための国産のスオミ短機関銃が搭載されています。
かくしてBT-42は18両が造られて、1943年中頃から実戦に投入されました。そして歩兵部隊の近接火力支援を受け持ち、多数のソ連軍防御陣地を撃破しています。やがて、ドイツからIII号突撃砲が供給されると、BT-42はいったん二線級兵器に格下げされたものの、戦争が激しさを増した後期には再び第一線に投入されています。
ただ、さすがにこの頃になると防御力の低さは問題で、8両を失って戦線から後退。その後、本車が戦闘に参加することはなかったとも伝えられます。
しかし、フィンランド軍ではその勇戦を称えてか、継続戦争が終わって80年が経つ今日においても、国内のパロラ戦車博物館に1両が保存・展示されています。
【了】
Writer: 白石 光(戦史研究家)
東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。
コメント