勢い増す羽田リムジン 鉄道計画に影響も?

2020年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピックに向け、話題となることが多い羽田空港のアクセス交通。昨年夏にJR東日本が発表した「羽田空港アクセス線」をはじめとする鉄道の新線構想が注目を浴びる中、首都高中央環状線全通による時間短縮などで、バスの存在感が高まってきています。

「快適性」が中心だったリムジンバスのメリット

 2015年3月7日に大橋JCT(ジャンクション)~大井JCT間9.7kmが開業し、全通した首都高速道路の中央環状線(C2)。これまで渋滞の「名所」だった浜崎橋JCTの渋滞が解消されるなど、都心部の道路交通にさまざまな変化をもたらしていますが、特に利便性が高まったといえるのが、新宿などから羽田空港までのアクセスです。首都高速道路会社の発表によると、新宿(西新宿JCT)から羽田空港(空港中央)までの所要時間はC2の全通後、混雑時の平日11時台でも約40分から約19分まで短縮されました。

 この恩恵を受け、利便性が大きく向上するとみられる交通機関があります。空港リムジンバスです。

新宿付近を走るリムジンバス。中央環状線全通を受けた4月1日のダイヤ改正で所要時間が短縮される(撮影:小佐野カゲトシ)。

 リムジンバスを運行する東京空港交通は、首都高中央環状線(C2)の全通を受けて4月1日にダイヤ改正を行います。目玉は、C2経由にルートを切り替えることによる新宿エリア・池袋エリアと羽田空港を結ぶ路線の所要時間短縮です。

 これまで、空港バスのメリットは乗り換えがないことや必ず座れることなど「快適性」が中心で、速さの面では鉄道利用が優位を保ってきました。新宿から羽田空港までの平均所要時間は、JR山手線と京急電鉄、または東京モノレールを乗り継いだ場合、約40~50分です。しかしバスは朝方の最も速い時間帯で新宿駅西口~羽田空港第2ターミナル間が30分なのを除けば、おおむね50~60分を要していました。

「羽田空港アクセス線」より早く

 しかし、バスはダイヤ改正後、新宿~空港第2ターミナル間の所要時間が最短で25分、そのほかの時間帯でも鉄道利用と同等の40~50分に短縮されます。

 また、これまで最短で45分だった池袋~空港第2ターミナル間は最短35分となるほか、昼間の便でも従来より10分短い50分に短縮されます。同区間は山手線とモノレール・京急を乗り継いだ場合で50分台のため、こちらも鉄道と互角か、バスのほうが速いケースも出てくるでしょう。

 現在、JRが計画している「羽田空港アクセス線」は新宿~羽田空港間を23分で結ぶ予定ですが、今回のリムジンバスダイヤ改正で同線の実現より早く、20分台で新宿と空港を結ぶ交通機関が登場することになります。

首都高中央環状線の全通で、新宿~羽田空港間の所要時間はほぼ半減した(画像:首都高速道路)。

 加えてバスは「空港の出発ロビーにダイレクトに着くため、空港に着いてからの移動時間も鉄道より短い」(東京空港交通の担当者)という、もともとのメリットが存在。東京空港交通は、そのほかの路線でも道路状況に応じてダイヤ改正を検討するとしており、中央環状線の効果に期待感を示しています。

 中央環状線の開通で、すでにダイヤ改正を行った高速バスもあります。ジェイアールバス関東と日東交通が運行する、新宿と千葉県の館山を東京湾アクアライン経由で結ぶ「新宿なのはな号」です。3月14日のダイヤ改正で最短の所要時間は1時間47分となり、従来より10分短縮されました。

 同区間は便数の点からもバスがすでに優勢ですが、所要時間の点だけ比べても、JRの特急「新宿さざなみ」号は同区間で約2時間10分かかっています。もし渋滞があったとしても、15分程度の遅れならまだバスのほうが速いのです。鉄道網の発達した首都圏においても、中央環状線の全通でいま、バスの競争力が確実に高まっています。

今後の空港アクセス鉄道建設に影響も?

 早朝・深夜の羽田空港アクセスでもバスの存在感が増してきています。国土交通省などは、昨年10月26日から羽田空港国際線ターミナルと東京駅や新宿・池袋駅、渋谷駅などを結ぶ5路線で、空港発午前1時台・空港着4時台の「深夜早朝アクセスバス」を実証運行しています。

 同アクセスバスの運行は今年3月末までの予定で開始されましたが、利用者数は「堅調に推移している」とのことで、4月からは有明・豊洲・葛西方面へのルートを新設するなど7路線に拡大し、運行を継続。あわせて国内線ターミナル発の深夜バスも4月以降、3路線が運行される予定です。

 現状では、羽田空港のアクセス交通は鉄道が優勢です。国土交通省の2011年度のデータによると、羽田空港アクセス交通のシェアはモノレール(31.6%)と京急(29.3%)を合わせた鉄道が60.9%、空港バスが22.9%で、鉄道が全体の6割を占めています。

羽田空港アクセスのシェアは、東京モノレールと京急利用が合計で6割と多数を占める(撮影:小佐野カゲトシ)。

 羽田空港のアクセス交通をめぐる議論でも、中心となっているのは鉄道の新線計画です。「羽田空港アクセス線」を建設して新宿・東京・新木場方面への3ルートを整備するJR東日本の構想のほか、東急東横線と京急空港線を結ぶ「蒲蒲線」、東京モノレールの東京駅延伸など、鉄道によるさまざまな新ルートの構想が浮上しています。

 しかし、鉄道の新路線建設には莫大なコストと時間がかかります。今回の首都高中央環状線全通に伴うダイヤ改正で所要時間が短縮されれば、空港アクセスでのバスの競争力がアップするのは間違いありません。また、鉄道では難しい深夜・早朝の運行も、小回りの利くバスの強みが活かされています。こうしたバスの利便性向上が、空港アクセス鉄道をめぐる今後の議論に影響を与えることも考えられなくはないでしょう。

【了】

Writer: 小佐野カゲトシ

1978年、東京と神奈川の境の小田急沿線生まれ。地方紙で約10年間記者として勤務したのち、2013年からフリーに。現在は国内・海外の鉄道について取材・執筆を行っている。海外の鉄道は国や地域を問わず、全般に関心を持っている。

この記事の写真一覧

関連記事

最新記事

コメント

2件のコメント

  1. リムジンバスが便利になる分、蒲蒲線は、東急と京急をホームで乗換えとか、工費節減のために単線として低頻度運行などと暢気なことは言ってられません。
    http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42402

  2. 以前に比べて道路渋滞も解消され定時制が確保されているリムジンバス。首都圏各地で路線網も充実しているし、何しろ空港での発着が空港ロビーカウンターとほぼ直結状態。万一の事故発生にも経路を柔軟に運用し、鉄路の場合には確実不通となる点と比較しても断然に有利で安心。自分はどちらも便利なエリアに居住しているが、羽田も成田も毎回100%リムジンバス利用デス。