“新しい交通機関”だったモノレール 三菱の湘南モノ売却は「長い実験の終わり」

2015年5月、湘南モノレールの売却が報じられました。モノレールの製造会社と系列会社が保有する株式を、交通機関の運行を手がける会社に譲渡する形です。かつてモノレールは「新しい交通機関」として世界で注目され、日本の大手企業も参入。湘南モノレールも同様に「三菱の実験線」的な側面があります。しかしその背景を探ると、モノレールの長所と短所が見えてきました。

製造会社から運行会社へシフトチェンジ

 湘南モノレールの主要株主は、湘南モノレールを建設した三菱重工、三菱商事、三菱電機です。そのすべての保有株式がみちのりホールディングスに譲渡されます。みちのりホールディングスは公共交通機関の経営再建と運営を手がける持株会社です。傘下には福島交通グループ、関東自動車グループ、茨城交通グループなどがあります。

 みちのりホールディングスは、現在はバス会社の支援業務が中心です。複数のバス会社を束ねて、車両など設備を一括購入してコストを下げたり、保守整備、人事教育制度、旅行企画などを連携したりしてスケールメリットを計っているようです。そんなみちのりホールディングスにとって、モノレール会社は新しい交通機関。車両についてスケールメリットはメリットはなさそうです。

 しかし、同社は交通機関の運用について豊富なデータと経験を持っています。みちのりホールディングスによると、「環境にも優しくエコな乗り物であるモノレールの利用を促進するため、バリアフリー化を始め、お客様の視点で利便性の向上に努めて参ります」とのことです。道路から駅へのエレベーターが整備されそうです。

 また「グループ各社が注力してきた首都圏全域からの誘客や訪日外国人観光客の利用促進のための諸施策を導入することにより、利用者の増加による事業の成長を目指して参ります」とのことですから、広域な企画切符への組み込みも期待できそうです。また、沿線の人々から要望の多いICカード型乗車券の導入も検討されるでしょう。

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モノレールは一般的にホームが高い位置にあるため、エレベーターなどの整備が課題になる(杉山淳一撮影)。

 三菱グループが湘南モノレールを建設開業した理由のひとつに、懸垂式モノレール事業を推進するための実験がありました。戦後の好況期に各地で湧き上がっていたモノレールブームを受けて、交通事業への参入を探っていたようです。しかし、この事業は本格参入に至らぬまま、今日を迎えています。

 三菱グループが今回、湘南モノレールの経営から手を引くことは、いわば長い実験の終わりなのです。また、三菱グループからみちのりホールディングスへの株式譲渡は「製造会社」から「運行会社」への移管ともいえ、今後、そうした変化に伴った新しい施策も期待されるところでしょう。

【了】

Writer:

乗り鉄。書き鉄。ゲーム鉄。某出版社でゲーム雑誌の広告営業職を経て独立。PCカタログ制作、PC関連雑誌デスクを経験したのち、ネットメディアなどで鉄道関係のニュース、コラムを執筆。国内の鉄道路線踏破率は93パーセント。著書に『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。日本全国列車旅、達人のとっておき33選』(幻冬舎刊)など。

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