機械の身体、その人生は楽しい? 『銀河鉄道999』実現の可能性は 空想学会が科学的に分析
機械の身体は2050年くらいに実現できるかも?
比留川さんは「機械の身体」について、目や耳はロボットに内蔵済みで、医療技術分野で人工心臓、人工肺、人工腎臓(透析器)は実現しているものの、ロボットに搭載するためには小型化が課題といいます。また義手、義足の技術も進歩し、末梢神経とつないで制御できるまでになったそうです。
問題は脳です。脳だけは機械化できません。『銀河鉄道999』では、機械伯爵が鉄郎に「脳だけは撃たないでくれ」と懇願します。機械の身体はいくらでも交換できます。だけど脳を破壊されたら“本当の死”になってしまいます。脳が活動するためには酸素、ブドウ糖、アミノ酸などの供給が必要で、そのために胃や腸など機械の内臓が必要になります。また、脳と機械の身体をつなぐ技術も必要です。
比留川さんは1970(昭和45)年のサルの脳移植や、2017年に人間の脳移植が行われる可能性を紹介しました。しかし、脳と脊髄の接続は相当困難なため、脳から脊髄までを一体として、身体の末梢神経をつなぐほうに可能性があるといいます。そして、2050年くらいまでに機械の身体は実現できるかもしれない、と結びました。
しかし、この講演で筆者(杉山淳一)がもっとも感心したところは「そうして機械の身体になって、その人生は楽しいだろうか」と比留川さんが疑問を呈したところです。人工肝臓でお酒に酔うことはできても、食事の楽しみはなく、スポーツはできるかもしれないけれど恋愛は微妙で、知的な趣味だけが最大の楽しみ、つまり、ゲーム漬けの人生になりそうです。
そういえば、映画『ウォー・ゲーム』では、主人公と人工知能が○×ゲームで決着を付けようとする場面がありました。機械の身体が実現しても、その人生は楽しくないかもしれない。そのとき、人は永遠の命を望むでしょうか。
この話を聞いて、シンポジウムに出席した『銀河鉄道999』の原作者、松本零士さんは「鉄郎が機械の身体を選ばなかった理由は(機械の身体の人生がつまらないから)ではなく、限りある命だから人はがんばるからです」と語りました。これが『銀河鉄道999』という物語の主題です。
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