みんな撮り鉄!? 鼻先を列車が走る「驚愕スポット」行ってみた! SNS普及によるトラブルも
ベトナムには、数十cmの眼前を鉄道車両が通過する「トレイン・ストリート」と呼ばれる場所があります。そこは、いわゆる“映える”写真が撮れると話題になった観光地で、ゆえにオーバーツーリズム問題も含んでいました。
ここもオーバーツーリズム問題の影響が
現在では立派な観光地となったこの場所ですが、ここに至るまでには紆余曲折があったそうです。
沿線の建物はもともと一般の住宅地として整備され、この地に住む人々は線路とその脇の道を生活道路として利用していました。南側の通りには線路脇の小道にしっかりと通りの名前が付けられています。
当初は、それら住民を対象とした飲食店や商店がこの通りにできたのですが、その中のいくつかが観光客向けの営業を始めると、ここに来れば眼前を列車が走り抜けるという面白い光景に出会えるとして話題になり、昨今のSNSの隆盛に乗る形でいわゆる「映えスポット」として拡散。こうして現在の観光地として成長してきた模様です。
しかし、有名になって多くの観光客が訪れるようになった結果、人々が線路内を無秩序に往来するようになったとか。ベトナムメディアの報道によると接触を避けるために列車が緊急停止する事態がたびたび起きるまでになったといいます。
2019年には安全な運行ができないとの判断から、列車がルートの変更を行う事態も発生しており、大挙して訪れた観光客によって地元住民の生活が悪影響を受けるオーバーツーリズム状態へと変貌します。これを受け、当局は同年に安全への懸念から通りの飲食店を閉鎖させ、通りへの観光客の立ち入りも禁止して、通りの入り口にはバリケードまで設置するまでに至った模様です。
そのため、この通りに観光客が再び入れるようになったのは比較的最近で、「トレイン・ストリート」の営業が再開したのは2023年になります。2024年12月現在は観光客の立ち入りに制限はないものの、ベトナム国内の報道を追っていくと、当局はこの通りの商店に対して警告や規制を定期的に行っており、ハノイ市観光局もここでの団体ツアーを企画しないよう、旅行代理店に要請したことがあるそうです。
「トレイン・ストリート」は非常に貴重な観光資源であり、ここで営業する店舗は多くの雇用と経済効果を生み出しています。その一方で当局は安全上の懸念とオーバーツーリズムについて問題視し続けており、今後も事態の推移によっては入場規制などが設けられる可能性もあります。
この場所は鉄道好きから一般の観光客まで、さまざまな人々が楽しめる観光地といえますが、当局の判断で以前の状態に戻る可能性が高いため、訪れる場合は事前の下調べを行うことをオススメします。
Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)
雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info
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