『ガンダム』の「ビームバリア」なぜ宇宙戦艦に使わないのでしょうか? じつは諸刃の剣だった!?
『機動戦士ガンダム』シリーズにはMS以外にも印象的な宇宙艦艇が数多く登場します。とはいえ、なぜ登場する艦艇はすぐさま撃破されてしまうのに、防御がおろそかなのでしょうか。
MSが盾代わり! ビームバリアを張れない切実な理由
宇宙軍艦に過度な装甲やバリアを搭載しない理由は「本末転倒」になりかねないことにあるのだと思われます。第二次世界大戦の水上軍艦と、宇宙世紀の宇宙軍艦最大の違いは、「戦艦の主砲でも、精度・射程ともにMSを含む目標を砲撃できる」「砲撃が距離により大幅に威力を失う」ということです。
ファーストガンダム時点でビーム兵器を防ぐ手段は装甲のほかに2つあります「ビームかく乱幕」と「ビームバリア(Iフィールド)」です。いずれも超高濃度のミノフスキー粒子を展開して、敵のビームを阻害するという防御兵器です。
このうちビームかく乱幕に関しては、ファーストガンダムでは地球連邦軍とジオン軍双方の宇宙艦艇同士の砲撃戦が始まる直前に、突撃艇などが大量に散布する描写があります。さらに、軍艦に関してもミノフスキー粒子の散布能力を備えており、戦闘時はお互いに散布しています。
この両陣営が散布した大量のミノフスキー粒子の影響もあって、遠距離でのビーム兵器は大幅に威力を弱められていると推測できます。この決定打のない砲撃戦の代わりとなるのがMSによる艦への直接攻撃で、ジオン軍が開戦序盤優位に戦いを進められた理由でしょう。現実の海戦で航空機が登場したときのように、装甲を施せない艦橋や動力部分など、弱い場所を集中して狙うことができたためです。
さらにMSは進化し、連邦軍のガンダムの持つビームライフルなど「戦艦の主砲並みの威力」と称するMS携行型のビーム兵器も登場します。これらの兵器は数発、当たり所が良ければわずか1発で敵艦を沈めることが可能です。ただMSのビーム兵器が戦艦並みなら、戦艦にそれを多数搭載した方が有利ですから、威力自体は戦艦の方が上と推測できます。「近距離でMSが放ったビーム兵器は、遠距離砲撃により、ミノフスキー粒子で減衰した戦艦主砲に近い威力を持つ」ということでしょう。
この携行ビーム兵器に関しては時代が進んで『機動戦士Zガンダム』の世界になると、百式が装備する「メガバズーカランチャー」のようにMS数機をまとめて消し飛ばす、もはや艦艇の主砲以上の威力がありそうなものも登場します。これはMSの機動性で近接しつつ、戦艦並みの高出力ビームを撃ちこむ想定なのでしょう。
こうなるとますます宇宙艦艇にはビームバリアが必要な気がします。実際にMSより巨大で局地戦などを想定されて作られたビグ・ザムのようなMA(モビルアーマー)は、Iフィールド発生装置を装備し、MSからのビーム攻撃も防げるようにしています。
ただ艦艇が使用するには大きな問題があると考えられます。MSのビーム攻撃はある程度防げるかわりに、Iフィールドを展開すると自ら発する超高濃度のミノフスキー粒子によって、自艦のセンサーやメガ粒子砲を阻害するのではないでしょうか。
先述した通り、宇宙艦艇の存在意義は「戦闘指揮」と「支援砲撃」にありますが、ビームバリアを展開してその能力が大きく阻害されるなら、任務を果たせなくなります。コストも高くなる上に、ビームサーベルなどの近接型ビーム兵器だと効果がないため、味方MSが突破されたら取りつかれて撃沈されます。装甲を分厚くしないのも、長距離ビームは減衰し、近接ビームは防げないから、やるだけ無駄という観点でしょう。つまり、バリアを装備する意味がないとも考えられるわけです。現代艦の「装甲ではなく、艦から遠いところで防ぐ」をMSがしているということです。
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