「神社仏閣」を参考に作られたバイクって!? “海外のマネじゃない”強すぎる思いが生んだ結果とは
かの本田宗一郎が、自ら神社仏閣を巡りヒントを得て打ち出したと言われるバイクが、ドリームC70です。その後のバイクに大きな影響を与えた神社仏閣バイクとは、いったいどのようなものなのでしょうか。
名車CB72誕生のきっかけにもなった
本田宗一郎さんがドリームC70に対し、ここまでこだわった背景にはもう一つの大きな理由がありました。

C70はホンダとしては初の空冷4ストロークOHC2気筒のエンジンを搭載した250ccモデルであり、当時の同排気量では破格の18馬力7400rpmを実現。最高速度130km/hも出る画期的なバイクだったからです。
他方、発売当時のドリームC70はツーリングやビジネスといった場面での実用性を強く打ち出し、スーパースポーツモデルではありませんでしたが、この優れた機能をレース用にリファインさせたのが1960年に登場するドリームCB72スーパースポーツでした
CB72の発売時のキャッチコピーは「トップで70キロ以下では走れません」。そのコピー通り、当時のレースからツーリングまで幅広い場面で活躍。今日まで語り継がれる名車として知られていますが、ドリームC70はそんな名車誕生のきっかけを作ったバイクでもありました。
また、日本において「バイクに乗ったヒーロー」の元祖として知られる「月光仮面」(1958年)は、なんとドリームC70のマイナーチェンジモデルで、セルスターター付きのドリームC71にまたがっていました。
こんな経緯もあり、「月光仮面」に熱狂し、憧れや夢を描いた当時の少年たちの間でも、ドリームC70・C71は今日まで色褪せることのない特別なバイクでもあるというわけです。
ここまでを振り返ってみると、本田宗一郎さんによる「夢を力に」「夢=dream(ドリーム)」の思いはドリームC70によって、一つのカタチになったようにも思います。そして、この「夢の実現」は何もホンダのアイデンティティだけに限らず、バイクユーザーや当時の少年たちの「夢」にも派生したようにも思います。
ドリームC70は「神社仏閣バイク」という斬新性ばかりが注目されるきらいがあります。しかし、ここまで背景を知ると、ドリームC70はホンダが叶えた「夢」の一つであり、そして、さらなる未来へと進むきっかけとなったバイクだったようにも感じます。
Writer: 松田義人(ライター・編集者)
1971年、東京都生まれ。編集プロダクション・deco代表。バイク、クルマ、ガジェット、保護犬猫、グルメなど幅広いジャンルで複数のWEBメディアに寄稿中。また、台湾に関する著書、連載複数あり。好きな乗りものはスタイリッシュ系よりも、どこかちょっと足りないような、おもちゃのようなチープ感のあるもの。
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