「グリーンランドを売ってくれ!」トランプ大統領のトンデモ発言 実は日本のビッグチャンスかも!?
トランプ大統領が就任前から、グリーンランドやカナダを取得したいと発言しています。この発言を物流の観点で考えると、その意味が見えてきます。そして、その恩恵を最も受けるのは、日本かもしれません。
中国も重視してきた北極海航路
ここで、北極海の2つの航路が拓かれてきた近年の経緯をおさらいします。
・1996年、カナダ、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、ロシア、スウェーデン、アメリカによって「北極評議会」が設立
・2007年、流氷が減少し砕氷船なしで北西航路が全て通れる状態が起きる
・2016年、中国企業によるグリーンランドの旧米海軍基地施設買収を、米政府が阻止
・2017年、中国が「氷上シルクロード」構想、ロシアと北極海航路開発協力推進に合意
・2018年、「中国の北極政策」が公表。グリーンランドの空港拡張工事に中国系企業が参入しようとし、デンマーク本国や米国が警戒
・2019年、米国トランプ大統領がグリーンランド買収を提案
・2021年、中国が第14次5か年計画に「北極の実務協力に関与し、『氷上のシルクロード』を建設する」と明記、ロシア・ヤマル地域でのLNGプロジェクトに参画
・2022年、「ロシア連邦海洋ドクトリン」が改訂され、北極海を重視
・2024年、米国トランプ次期大統領がグリーンランド買収やカナダ吸収を発言
カナダ政府は、北西航路が通る北極諸島の海峡を領海であると主張し、国際海峡とみなしている各国と論争になっています。トランプ大統領の発言は、北西航路への影響を与える意図があると思われます。パナマ運河も合わせて発言しているのも海上物流を睨んだ戦略ではないかと思えます。
北極海航路が幹線になるには、まだまだハードルが
気候変動により北極海の氷が溶けて北極海を通りやすくなってきたとはいえ、現在の北極海航路はロシア北極海航路局(NSRA)への申請が必要で、通航船のアイスクラス(耐氷・砕氷性能)や氷の状況などから、砕氷船によるエスコートなど一定の航行許可条件が課されます。また、通航船の船長の北極海航路の航行経験によっては、アイスパイロットと呼ばれる水先人の乗船義務も生じます。
運航可能な時期も限られ、気象海象による減速や待機もあるほか、耐氷性能をもつ船の建造費も上がり大きさも制限され保険も高くなるため、コストも時間もかかっています。さらに、信頼できる水深情報、捜索救難システム、海洋汚染などの課題もあります。なかなか困難の大きな航路になりそうですが、近道の魅力が勝るようです。
コメント