特急あずさ“最長の行先”43年の歴史に幕 長野「南小谷」なぜこの駅止まりになったのか

2025年3月のダイヤ改正で消える、特急「あずさ」の大糸線「南小谷」行き。定期での乗り入れから43年もの月日を経て、状況は大きく変化してきました。「あずさ」が乗り入れる大糸線の過去と現在を振り返ります。

存続の危機に立つ南小谷以北

 それから43年ものあいだに、電化と非電化の境界駅である南小谷は、車両の運用の境界となることから、JR東日本とJR西日本との境界駅にもなりました。列車も南小谷で分断されており、特にJR西日本管内の大糸線がおかれている状況は厳しさを増しています。

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南小谷駅にて。左から「あずさ」、JR西日本の普通列車、JR東日本の普通列車(画像:PIXTA)。

 JR西日本の資料によると、南小谷~糸魚川間の1日の輸送密度のピークはスキーブームもあった1992(平成4)年で1日1282人。それが2019(令和元)年は1日102人にと、ピーク時の約92%減まで落ち込んでいます。2017~2019年度の平均として1年間の赤字が5.7億円になることも発表されています。

 JR西日本は将来的な持続可能な交通体系への議論として、廃止も含め第三セクター方式やバスへの移行の沿線自治体との検討に入っています。

 JR東日本管内も、白馬は外国人観光客でにぎわうものの、そこから南小谷までは需要がぐっと細ります。一方で、南小谷~糸魚川間にまつわる地元の議論では、南小谷以南に列車を直通できれば、利用促進につながるとの見方があります。南小谷~糸魚川間を利用する人の8割は観光客で、その大半が糸魚川から南小谷・白馬といった拠点間移動であることもわかっています。

 このため2024年からは、「大糸線利用促進輸送強化期成同盟会」が中心となって、北陸新幹線敦賀延伸効果による乗客の呼び込みを行うため、南小谷~糸魚川間の列車がない時間帯に新幹線との接続に考慮した「JR大糸線増便バス」を1日4往復走らせるなどの施策を行っています。

 このバスは糸魚川~白馬間で運行され、バスによって“南小谷以南”の直通を果たしています。これによって直通効果を測定する狙いです。

 一方で、地元ではかねて南小谷~糸魚川間のダイヤ設定について、南小谷での「あずさ」や糸魚川での新幹線との乗継を円滑にするよう要望もしてきましたが、「あずさ」が白馬止まりになると状況は変わります。また、名古屋から臨時で大糸線に乗り入れる特急「しなの」も白馬止まりです。それでも、北陸新幹線との連携も考慮するうえで、再び特急「あずさ」が南小谷へと区間を戻す日はくるのでしょうか。

【え…!】念願の糸魚川から「南小谷以南」直通いまならできます!(地図/画像)

Writer:

1972年埼玉県浦和市(現・さいたま市)生まれ。雑誌「旅と鉄道」元編集長。26年間にわたる編集プロダクション、出版社勤務において、編集者として400点以上の雑誌、ムック、書籍を制作。2024年に独立。

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