初飛行から60年!「ヘリコプター界の軽トラ」が今も愛されるワケ 次世代モデルは無人化か?
タイ軍が新たにAH-6軽攻撃ヘリコプターを導入します。このご時世、ドローンの方が有用な気がしますが、なぜ有人の小型ヘリを選択したのでしょうか。じつはドローンでは行えない、使い勝手の良さが評価されている模様です。
ドローンみたいなAH-6も
また、戦場では大型輸送ヘリコプターを展開するほどではない、小規模な輸送ニーズが頻繁に発生します。AH-6は機内に2名、加えて特殊な装備を用意することで機外にさらに4名乗せることが可能であり、「ちょっとした輸送」を迅速にこなせます。こうした「戦場のタクシー」としての役割も、ドローンでは賄えない領域です。
このように、AH-6は性能面において何か秀でているわけではありません。しかし、その「中庸性」こそが真価を発揮する要因だと言え、偵察、攻撃、人員輸送のすべてを1機で行えるマルチツールとして活躍できる素養を持っています。
そして、リトルバードは大型ヘリコプターよりも小型で軽量なため、展開が容易です。タイのような国防予算が限られる国にとって、こうした小型のヘリコプターは貴重な戦力となると言えるでしょう。ちなみに、前述したような汎用性はアメリカ軍も買っており、少数の人員による作戦を専門とする、アメリカ陸軍第160特殊作戦航空連隊においても、AH-6/MH-6が運用されています。
AH-6の導入は、ドローン全盛時代において一見時代遅れにも思えるかもしれません。しかし、実際にはドローンと有人機のその隙間を埋める存在として、迅速かつ低コストで多用途な対応を可能にする機体と見ることが可能です。そのため、ボーイングではその他の国にもAH-6の需要があると見ており、さらなる市場の拡大を狙っています。
なお、AH-6のバリエーションのひとつとして、無人機仕様もすでに初飛行を成功させています。ひょっとしたら、今後も運用の幅をさらに拡張する方向で進化を続けるかもしれません。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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