「陸の孤島と化した被災地に自衛隊がスーパーメカですぐ来てくれる」という幻想 琵琶湖の訓練で現実を見た
能登半島地震では、「陸の孤島」と化した被災地域への救助活動が難航しました。それから1年後、琵琶湖西岸が被災地域となったという想定で、陸上自衛隊が「南海レスキュー2024」を実施。ここも有事の際は陸の孤島と化す可能性があります。
自衛隊の本分は外敵から国土を防衛すること
水際地雷敷設車は第304水際障害中隊所属で和歌山県日高郡美浜町の和歌山駐屯地に所在しており、この訓練のため滋賀県高島市まで約200kmを自走してきたのです。現場に着くまでには時間がかかります。
また、自衛隊の行動にはすべて法的根拠が必要になることも忘れてはいけません。知事からの災害派遣要請があって初めて実動でき、地方行政機関はもちろんのこと、湖畔の各権利関係者との事前調整も必要になります。勝手に湖畔に乗り入れることは許されません。これら条件が整わなければ、せっかくの水陸両用車も使えないことがあり得るのです。
そもそも、自衛隊の本分は外敵から国土を防衛することにあり、“スーパーメカ”は全て兵器であって、救助器材ではありません。水陸両用車もその名の通り水際地雷を敷設するのが目的で、地雷敷設装置を取り払って簡易的に荷台を設けただけなので、物資輸送に使い勝手が良いとはいえません。
『サンダーバード』では、1号の偵察・情報共有から、コンテナ交換シーンが印象的な2号のスーパーメカの選定、輸送、現場作業のストーリー仕立てになっていますが、現実はもう少し複雑です。必要な物を必要な時に必要なだけ、と言葉にするのは簡単ですが、これこそ軍事の要諦であり最も難しいことでもあるのです。
自衛隊の装備品カタログを眺めて災害救助シーンを妄想するのは勝手ですが、装備のカタログスペックと現場で運用する制約とを整合させるのは大変な作業です。2024年1月2日に出動した1000人の自衛隊員は、本当に遅くて少ない人数だったのでしょうか。
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
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