トランプ大統領「管制官の多様性が事故原因だ!」←批判が殺到!? 旅客機とヘリの衝突墜落事故 その真相は?

アメリカの首都ワシントン近郊のレーガン・ナショナル空港付近でアメリカン航空系の旅客機と米軍ヘリコプターが空中で衝突して墜落しました。両機の計67人全員が絶望的な大惨事を巡り、ドナルド・トランプ大統領が論拠を示さずに事故原因を決めつけたことに批判の声が続出しています。

墜落衝突事故を「政争の具」にしたトランプ大統領

 民間機パイロットのリック・レッドファーン氏はロイター通信に対し、事故機のアメリカン機が向かっていた33番滑走路(長さ1586m)は「ポトマック川沿いの東側から入る曲がり角がとてもきつい」と解説しています。

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ワシントン・ダレス国際空港の旅客ターミナル(大塚圭一郎撮影)。

 さらに、周辺地域の特殊要因もあって「狭い飛行経路を正確に飛ばなければならない」とのこと。それは2001年9月の同時多発テロを受け、一般の民間機が政府庁舎などの空域を飛ぶことを禁じた飛行制限によるものです。

 当時、テロリストに乗っ取られた民間機の1機は国防総省(ペンタゴン、バージニア州)に激突し、別の1機は未遂に終わったもののホワイトハウス(ワシントン)への突入を企てていました。このため再発防止策として、政府庁舎の空域を一般の民間機が飛ぶのを禁止しました。

 今回の事故についてマリア・カントウェル上院議員(民主党)は「民間機が着陸する経路のすぐ近くで、なぜ軍の訓練飛行を行うのか」と問題視し、レーガン空港近くで軍の訓練を実施するのを取りやめるべきだと提言しています。

 一方、トランプ大統領(共和党)は、ジョー・バイデン前大統領(民主党)が雇用の多様化を推進して管制官の採用基準を下げたことが事故の背景にあると決めつけて非難しました。しかし、報道陣から多様化が事故につながった根拠を問われても「そうかもしれない」としか答えられず、具体的な根拠を示せませんでした。交流サイト(SNS)には「トランプ氏は調査を全くしていない航空機事故まで民主党のせいにするのか」「自己中心的なイカれた冷血漢の暴言が、遺族の傷口に塩を塗っている」といった批判の書き込みが相次ぎました。

 67人の尊い命が奪われ、遺族らが深く悲しんでいる大惨事まで“政争の具”に利用しようとするトランプ氏の姿勢は言語道断です。このような悲劇を2度と繰り返さないために党派の違いや所属組織の垣根を乗り越えて関係者や有識者らの英知を結集し、有効な再発防止策を導入することが為政者の役割ではないでしょうか。

【画像】これが米軍ヘリと衝突・墜落したCRJの同モデルです

Writer:

1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。

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