「観光バスに対抗だ」←なら、お座敷列車じゃないよね 「若者を呼び込め!」で生まれた異色の国鉄客車とは

JR西日本が保有する14系客車「サロンカーなにわ」は、日本で最初の欧風客車です。この車両は、実用本位の国鉄が「乗って楽しい列車」を目指して方向転換した、歴史的なものでもあります。

お召列車の栄誉にも

 登場以来、団体列車として運行されることが大半でしたが、ときには山口線の「SLやまぐちDX」として蒸気機関車に牽引されたり、「サロンカー屋久島」のような臨時夜行列車で起用されたりしました。こうした転用は、全車個室のため販売しにくいとしてお座敷客車に再改造された「サロンエクスプレス東京」とは対照的といえます。

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団体専用夜行列車「サロンカーあかつき」(2016年11月25日、安藤昌季撮影)

 2010年代になってからは、団体専用夜行列車として運行されることも増え、「サロンカーあかつき」「サロンカーあさかぜ」「サロンカー明星」といった、かつての寝台特急を模した列車としても運行されました。筆者(安藤昌季:乗りものライター)は、大阪~長崎間を走った「サロンカーあかつき」に乗車しましたが、夜間は室内灯が減光され、オリジナルの14系客車同様、夜行運行に対応していることを実感しました。

「サロンカーなにわ」は1994(平成6)年より、お召し列車としても運行されています。ラウンジカーでもあるスロフ14形703号は、天皇陛下のご乗車を想定して防弾ガラスとされ、隣のオロ14形706号のトイレは洋式化されています。天皇陛下のご乗車時には、スロフ14形703号が編成最後部となるため、2003(平成15)年の山口線運行時は、「SLやまぐち」用の転車台を利用して車両1両ごとに方向転換させるなど、お召し列車としての細やかな配慮もなされていました。

 2025年現在、「ジョイフルトレイン」と呼ばれた団体用改造列車はほぼ廃車されていることから、「サロンカーなにわ」は数少ない生き残りといえるでしょう。「サロンカーなにわ」以降、急速に増えた「乗ることを目的とした列車」は、今や全国に波及しており、日本は世界一の観光列車大国となりました。その始まりというべき歴史的名車である「サロンカーなにわ」。1日でも長く走り続けることを望みます。

今どき(当時)の若者向けに…! 欧風客車の豪華な車内(写真で見る)

Writer:

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロイラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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