「満席で乗れない!」相次ぐ高速バス ついにコロナ前まで需要回復も“便数不足” 盛況の路線/ざんねんな路線で“明暗”

高速バスがコロナ禍の低迷から抜け出し、「コロナ前」の旅客数まで戻りつつありますが、便数はコロナ前に至らず「満席お断り」が多発。路線の種類によって明暗が分かれています。人手不足にバス業界はどう立ち向かうのでしょうか。

利用者数は「コロナ前」まで回復 しかし…

 高速バスや空港連絡バスの需要が復調し、業界全体ではほぼ「コロナ前」の水準に戻りつつあります。ところが、一部には運休や廃止に追い込まれた路線もあります。明暗はどこで分かれたのでしょうか。

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バスタ新宿の利用者数はコロナ前の水準まで回復している(画像:PIXTA)。

 全国の高速バス、空港連絡バスの実績をリアルタイムに把握する統計はありませんが、筆者(成定竜一:高速バスマーケティング研究所代表)が常に参考にしているのが「バスタ新宿 利用状況(週平均)」です。バスタ新宿の整備者である国土交通省東京国道事務所が、利用者数および発着便数を、週ごとに、コロナ前のそれと比較しているグラフです。バスタ新宿発着便の構成を考えると、全国の傾向とおおむね一致すると考えられます。

 直近(2025年1月の最終週)の利用者数は、「コロナ前」の94%です。一方、発着便数のそれは82%です。需要はコロナ前水準を回復したのに、便数の回復が追い付いていない様子がわかります。

 1便あたりの利用者数、言い換えれば乗車率はコロナ前を既に上回っているわけです。労働規制の強化などによる乗務員不足のため、続行便(2号車、3号車)を設定できず「満席お断り」が多発してしまっています。需要に応えて十分な数の続行便を運行できていれば、利用者数はコロナ前比100%にもっと近づいていたはずです。

 特に好調なのは観光地への路線です。たとえば「新宿~富士五湖線」。朝は10分間隔で発車し、平日でも各便に続行便が付き、それでも「満席お断り」が常態化しています。

 富士五湖線は開業70年近い老舗路線ですが、富士山を見たいFIT(海外からの個人観光客)と、富士急ハイランドに遊びに行く若年層の需要が「爆発」しています。運行する京王と富士急行は、「管理の受委託」制度を活用しグループ会社を総動員して続行便を確保しつつ、渋谷や横浜などから富士五湖への路線に需要の誘導を図っています。

 首都圏各地から草津温泉(群馬県)への路線も好調です。団体向けの「大バコ」(大型旅館)が多かった草津ですが、社員旅行やバスツアーなど団体旅行が落ち込む中で、ターゲットを個人客、特に若年層に変えてマーケティングを展開しました。首都圏の若年層は自動車保有率が低く、結果として高速バスの需要が伸びました。

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コメント

1件のコメント

  1. なるほどね。こういう人がマーケティングしているから業界の本当の苦労が分からないんだね。

    利用者目線に立った便数維持?

    運行出来る事業者をその便に委託すれば良いと簡単に言うけど、出来ないから運航していないのが事実。

    都内発を運行できても、帰りがなければ結局利益を食いつぶすことになるから運行しないのは当然。

    JRのように三角ダイヤにすれば運行の無駄は減るが、乗務員はずっと拘束されて自宅に帰るのは数日に1回。それなのに給料は運行時間と付帯する時間だけ。

    出先だろうが地元で有ろうが勤務時間外は同じ扱いになってしまう現状を変えるべき。

    自宅に戻っていない勤務外は、安くない手当てをつけないといけない法制度を作るべき。

    業界をマーケティングするならば、運転手の存在を運転する機械と考えることから正すべき。

    運転手の重要性と報酬を軽く見すぎている世の中が、自分たちの利便性を損ねた事を認識すべき。

    お客様第一主義の履き違え、乗客も大事だが、サービスを提供する人材がいなければ成り立たず、その、運転手の立場はもっと尊重されなければならない。