通勤電車はなぜ「4ドア」主流に? 少なくても、多くても、大きくても困る!? 試行錯誤の120年
通勤形の鉄道車両で、大量の乗客が乗り降りするドアは重要な設備です。現在の通勤電車は4ドアが主流ですが、どのような経緯を経て、このようなスタイルに進化してきたのでしょうか。
「多扉車」が消えたのはホームドアのせい?
JR東日本はその後、京浜東北・根岸線、横浜線、中央・総武線各駅停車、埼京・川越線、東急電鉄は田園都市線に6扉車を導入しましたが、いずれも2020年までに姿を消しています。
ホームドア対応が困難であることが要因のひとつですが、これまで見てきたように、混雑に対応して数を増やしてきたのがドアの歴史です。5ドア・6ドアが必要なくなったのは、東京圏の混雑が一定程度に緩和したことが根本にあるのでしょう。
前述のように開口部はドア枚数と面積で決まりますが、面積からのアプローチが「ワイドドア車」です。地下鉄東西線「05系(一部)」「15000系」のドア幅は通常より50cmも広い1.8m。車体長に占める開口部は、20m車体6扉車が39%、東西線ワイドドア車が36%と遜色ありませんが、地味な印象は否めません。
ドアが広すぎると開閉に時間がかかり、その間に乗り降りが絶えないため、かえってスムーズではない、という指摘もあります。東西線が唯一、本格的な運用を続けているのは、各駅ホームの混雑車両付近に多数の係員を張り付けて乗降を制御することで、開口部を最大限活用できるからです。
4扉のワイドドア車はホームドアにも対応可能です。最後まで生き残ったのはワイドドア車だったという話ですが、東西線の激しい混雑もコロナ禍以降、緩和していることを踏まえると、ワイドドア車も間もなく役割を終えることになるのでしょう。
・参考文献『100年の国鉄車両』日本国有鉄道工作局、車両設計事務所(交友社)
Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)
1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx
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