戦闘機の部品「3Dプリンターで造りました!」何がメリット? 日本の次期戦闘機も活用 コストカットじゃなく“必要”だから
ロールス・ロイスが退役した戦闘機のエンジン部品をリサイクルするプロジェクトの詳細を発表しました。既存部品を細かくして3Dプリンターにより新たな部品を製造するようですが、これは日本も他人事ではないかもしれません。
3Dプリンター=「いかにも安っぽい」は間違い?
GCAPで開発される新有人戦闘機は長い運用期間が予想される上、日英伊や他の導入国がある程度独自に改良できる戦闘機であることが求められます。3Dプリンターで製造された部品は、従来の工法で製造された部品に比べれば容易に仕様が変更できます。BAEシステムズの3Dプリンター部品の活用はあくまでもテンペストの話でしたが、その技術はGCAPの新有人戦闘機の開発・製造においても有効だと筆者は思います。

韓国は、2026年の就役開始を目指して開発を進めている国産戦闘機「KF-21」に3Dプリンター製部品を使用することを明らかにしています。
以前、韓国がロッキード・マーチンと共同で開発した超音速練習機T-50の国産化率は59%でした。韓国はKF-21では国産化率を65%にまで引き上げることを目標としており、従来の航空機部品の製造ラインに比べて設置にかかるコストが安く、それゆえに企業の参入ハードルが低い3Dプリンター製の部品を使用するようです。
スウェーデンの航空機メーカーであるサーブは2021年3月、JAS39「グリペン」戦闘機に、3Dプリンターで製造した外装部品を装着して飛行試験を行っています。これまでも3Dプリンターで製造された部品の航空機への使用は増加していますが、飛行中に生じる摩擦熱や衝撃に対する耐久性の実証データが少ないことから、高速で飛行する戦闘機の外装部品への使用例はあまり多くありませんでした。
サーブは試験後に行った検査において、3Dプリンター製の外装パネルに構造上の変化は生じなかったと発表しています。同社は3Dプリンター製部品の活用の幅が広がれば、部品の調達に要する時間と修理に要する時間が短縮されると期待を寄せています。
軍用機における3Dプリンターで製造した部品の活用にあたっては、ハッカーが3Dプリンターを制御するコンピューターに侵入して意図的に欠陥を組み込み、部品の強度を弱める危険性があることなど、解決しなければならない課題も多いのは事実です。しかし、これまで述べてきたように新造においても修理においてもメリットが大きく、今後も活用される事例は増えていくものと思われます。
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
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