「高速鉄道1000kmつくります!」今までなかったのが不思議なくらい? それでも“黄信号”が灯るカナダの大風呂敷
カナダが東部の主要都市間を結ぶ全長1000kmの高速鉄道を整備する計画を発表しました。それを実現する財政基盤や技術力もあり、経済効果も見込めるものの、計画には暗雲が立ち込めているようです。
気になる「採用有力候補の車両」とは
VIA鉄道などを利用してカナダの10州全てを訪れた筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)は「カナダに高速鉄道がないのは不思議だ」と強く思っています。先進7か国(G7)に入っている経済大国なので、高速鉄道を整備できる財政基盤も技術力もあり、特にトロント―モントリオール間は大きな経済効果が見込めるからです。
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アニータ・アナンド運輸相兼国内貿易相も「わが国の人口のほぼ半数がここ(アルトの沿線地域)に住んでいるものの、既存の交通システムが追いついていない」と問題視し、アルトは「カナダ史上最大のインフラプロジェクトとなるだろう」と意気込みました。
今のところ、アルトで採用する車両は決まっていません。計画が進んだ場合、フランス国鉄(SNCF)の高速列車「TGVイヌイ」のように、列車の両端へ機関車を設けた動力集中方式の列車を採用し、TGVイヌイを手がける大手鉄道車両メーカー、アルストム(フランス)の車両受注が有力だと筆者は予想しています。
大きな理由は2つあり、1つはアルトを担う国営企業を手助けするコンソーシアム(共同企業体)「ケイデンス」にTGVイヌイを運行しているSNCF子会社のSNCFボヤジャーが加わっているからです。
ケイデンスは、アルトの設計や建設、運用、保守など経験やノウハウを提供します。構成企業のうち高速鉄道の豊富な運行実績を誇るのはSNCFボヤジャーだけのため、同社が培ってきた知見がアルトの設計に反映されてTGVイヌイと同じような車両が採用されることが考えられます。
2点目は、カナダでの雇用創出のために国内での車両組み立てが条件になる公算が大きく、この点でもカナダのボンバルディアの鉄道車両部門を2021年に買収したアルストムに有利なためです。
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