「アメリカに振り回されるのは嫌だ!」ウクライナ「F-16」に見切りつけるか? 欧州製戦闘機の導入増やす意図も
アメリカのトランプ政権の動向にウクライナが振り回されています。「トランプリスク」を肌で感じたウクライナ軍は、アメリカ製戦闘機ではなく、フランスやスウェーデンの戦闘機を重用するかもしれません。
スウェーデン製戦闘機の実戦投入あるか?
また、ウクライナはかねてよりスウェーデン製「グリペン」戦闘機の導入を検討しており、両国のあいだではすでに合意形成が進んでいます。しかし、アメリカ製F-16の供与が優先されたため、この計画は後回しにされていました。アメリカの支援停止を受け、「グリペン」の導入が再び現実味を帯びてきたといえるでしょう。

「グリペン」は、軽量かつ運用コストが低い戦闘機であり、短距離離着陸(STOL)能力を備えるため、ウクライナの限定的なインフラ環境に適応しやすいメリットがあります。さらに、スウェーデンはウクライナへの長期的な軍事支援を表明しており、必要な部品や兵器の供給も継続される可能性が高い点も重要です。
ただし「グリペン」のエンジンRM12はアメリカ製であり、主要な兵装もアメリカ製が多いため、完全に「トランプリスク」を回避できるわけではない点には留意すべきかもしれません。
いずれにせよ、アメリカの軍事支援停止はウクライナ空軍にとって厳しい局面をもたらす可能性があり、早期に再開したとはいえ「最悪のビジョンを見せてしまった」という事実は覆せないでしょう。今回の決定は、ウクライナの航空戦力の中核をアメリカ製戦闘機に依存するリスクを露呈させ、ヨーロッパ製戦闘機の戦略的価値を再評価する契機ともなり得ます。
ウクライナへ供与されるF-16の数は「ミラージュ2000」と「グリペン」を足しても上回りますから、早期の軍事支援再開が最もウクライナにとって望ましいのは間違いありません。しかし、「ミラージュ2000」はフランス政府の継続的な支援と運用の容易さを背景に、今後のウクライナ空軍の主力機として台頭する可能性があり、また、「グリペン」はそのコストパフォーマンスと独立した兵站支援能力により、ウクライナの防空戦略の新たな選択肢として現実味を増します。
ひょっとしたら、トランプ政権の発足が、ウクライナの「脱アメリカ化」を促進させるかもしれません。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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