「大和」と一緒に戦った“九死に一生”極めし軍艦、その稀有な経歴って? 今も”実は守ってます!”

戦艦「大和」が沖縄特攻作戦を行い、坊ノ岬沖で沈没してから、今年で80年。この戦いに共に参加し、生き残った駆逐艦がありました。

「大和」と共に特攻…その後は?

 第二次世界大戦の終結が迫った1945年、日本海軍は前年にレイテ沖海戦で敗れ、すでに大規模な海戦を行う力は残されてはいませんでした。

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「涼月」と共に防波堤となった「冬月」( 画像:パブリックドメイン)

 そういった状況で始まったのが沖縄戦で、艦艇での反撃として発案されたのが「天一号作戦」でした。内容は単純で、戦艦「大和」以下第一遊撃部隊の艦艇による沖縄への“殴り込み”作戦となります。とはいえ、沖縄にいくまでには、米・英の艦艇や艦載機がひしめいており、これらにどう対処するかといった具体的なプランはありませんでした。

「天一号作戦」は航空機による特攻作戦である「菊水作戦」と呼応する形で行われたため、明確に言わないまでも、実質的に艦艇による“特攻作戦”といえるものでした。

 そして「涼月」も、1945年4月7日に行われた、この帰るアテのない作戦に参加することになりました。

 9日、「涼月」が戦艦「大和」の左後方に位置し警戒航行を行っていた際、アメリカ海軍艦載機からの攻撃を受けます。「坊ノ岬沖海戦」の開始です。日本側の船は、次々とアメリカ軍の攻撃により沈没していきます。「涼月」も艦首甲板や右舷側外板などに被弾し、さらに命中弾により火災も発生します。これにより通信装置もなくなり、コンパスも破損・さらに砲塔は破壊され、弾薬庫は浸水、電源消失により消火活動もままならなかったといいます。

 ただ、奇跡的に一部の動力機関は動いていたため、何とか旋回して回避運動をつづけました。そうこうしているうちに、舵を失った戦艦「大和」が左舷に大きく回頭、あやうく激突しそうになったところを慌てて「涼月」が後進回避する、というような事態も起こっていたようです。

 この後、戦闘続行不可能と判断した「涼月」の艦長は「大和」が沈没するのと同じタイミングで、単艦での帰投を開始しました。ただ、通信装置が壊れてしまっていたために、「作戦中止命令」は受信できませんでした。

 この時の「涼月」の姿は、被弾により艦首が沈下し、前進するとそのまま海に潜っていってしまいそうなほどボロボロでした。というわけで、仕方なく機関長は後進を開始。バックで9ノットのスピードを保ったまま、帰ろうとしたのです。

海図は焼失、ジャイロコンパスも破損し、通信もできない、前に進むこともままならな い同艦 は、よろよろと母港を目指して進みました。そのようななかアメリカ軍は同艦に、雷撃機「アベンジャー」から魚雷を発射。しかし、これは奇跡的に命中することはありませんでした。

 翌4月8日、「涼月」は佐世保へと帰投しました。後ろ向きのまま進み、ボロボロの姿で港に入ってきた「涼月」に佐世保海軍工廠はサイレンを鳴らして歓迎したといいます。そして佐世保港入港時に、後進から前進に切り替えた瞬間、浸水が進行します。船員たちは慌ててタグボートに乗り換えたところで「涼月」は静かに着座してしまいました。

 その後再び復帰に向け修理が行われましたが間に合うことはなく、「涼月」はそのまま終戦を迎え、1945年11月20日に除籍となりました。

 3度も艦首を吹き飛ばされるほどの大きな被害にあいながらも、奇跡的に生還し「不沈艦」とも呼ばれる「涼月」は、除籍後どうなったのでしょう。

 実は、艦上構造物を取り除かれた船体はその後、駆逐艦「冬月」「柳」とともに、北九州にある若松港の防波堤として再利用されています。

「涼月」「冬月」は一緒に「大和」最期の作戦に参加した艦ということで、この3隻の元乗組員の方たちは、「大和」の戦没日に、合同で慰霊式を行うようになりました。その行事は、乗組員が高齢になったことで開催が困難となり終了する2016年4月7日まで続きます。

 なお地元で「軍艦防波堤」と呼ばれるこの防波堤は現在でも残っており、見学も可能です。ただし2025年現在では、船体は完全に埋め立てられてしまっており、「柳」の一部を見ることができるのみになっています。その「柳」も腐食が進んでおり、市民団体の「軍艦防波堤を語る会」を中心とした保存運動も行われています。

【猛烈な空爆】これが、戦艦「大和」最期の戦いです(画像)

Writer:

なぎはまな。歴史は古代から近現代まで広く深く。2019年現在はフリー編集者として、某雑誌の軍事部門で編集・ライティングの日々。趣味は自衛隊の基地・駐屯地めぐりとアナログゲーム。

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