「ガンダム」で“大気圏突入能力持ち”のモビルスーツ、なぜ超少数派? 無駄なのか有効なのか
『機動戦士ガンダム』シリーズには人型機動兵器「モビルスーツ」が数多く登場しますが、そのうち、宇宙空間から地上に降下する大気圏突入能力を有するのは一部だけです。なぜなのでしょうか。
Zガンダムでは機動性重視の降下作戦を想定か?
一方、Zガンダムの場合は、開発組織が「反地球連邦組織」であるエゥーゴとは異なります。

同組織は「反地球連邦」と掲げてはいますが、実質的には連邦内の強硬派であるティターンズに対抗するために設立された、連邦軍系のスペースノイドを中心とした組織にジオン残党が合流した組織ですから、地球連邦軍の情報を多く持っています。
そのため、衛星軌道上から連邦議会、ムラサメ研究所、オーガスタ研究所といった、政治的・軍事的重要拠点に脅威となり得る奇襲攻撃を行ったり、ニューホンコンを拠点とするエゥーゴのスポンサー組織「ルオ商会」が、ティターンズに攻撃されることも予想して、その要人をZガンダムに載せ、エゥーゴの地球上支援組織「カラバ」に引き渡すといった戦略的迅速性を必要とする用途が想定されたのではないでしょうか。
Zガンダムは可変式MSで、大気圏突入時は飛行機形態の「ウェーブライダー」で大気圏突入を行います。この機能の有効性は絶大で、大気圏突入終了後は即、長距離飛行や対空戦闘に移行することができます。
空戦能力を持ちつつ大気圏突入能力のあるZガンダムの活躍は、エゥーゴの影響力の範囲が地球圏全般に及ぶというプロパガンダにも有益でしょうし、高コストをかける価値を見出だしていたのでしょう。
ただ、こうした能力を全ての機体に持たせるのは、コスト的には問題があったようです。そのため、最初の作品である『機動戦士ガンダム』での一年戦争以降は、大気圏突入用に耐熱性のバルーンである「バリュート」を装備させることで、大気圏突入を行い、地上への軍事作戦を実施しています。
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロイラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
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