日本も愛用! F-4「ファントムII」が名機になった最大の理由とは ポイントは「人力」!?
航空自衛隊も運用したF-4「ファントムII」は累計約5200機も生産された傑作ジェット戦闘機です。ただ、ここまで世界中で採用されるほどのベストセラー機になったのには、構造上の大きな理由があったとか。一体どこなのでしょうか。
海軍のあとで空軍でも採用 それが決定打に
海軍での成功を受けて、アメリカ空軍もF-4を採用しました。空軍はその高い汎用性と搭載能力に着目し、空中戦だけではなく戦闘爆撃機、偵察機、敵防空網の制圧機など、多岐にわたる任務にF-4を投入、様々な派生型を生み出します。空軍での成功も「もう1人乗っている」という点が無視できない要素になったと言えるでしょう。

F-4はベトナム戦争をはじめとする数々の戦場で活躍し、その高い性能を実証します。特に、複座によるレーダーの有効活用は、敵機の早期発見と迎撃に大きく貢献し、「視程距離外(BVR)戦闘能力」を持ったF-4は、ミグ(MiG)をはじめとしたソ連(現ロシア)製の戦闘機を一方的に攻撃することができたのです。
こうしてF-4が戦闘機として優れた性能を持っていることが判明すると、世界中の国々から注目を集めるようになります。結果、自由主義陣営、いわゆる西側諸国の多くがF-4を採用、各型合計で約5200機も生産されています。なお、日本も前述したようにF-4EJを導入し、航空自衛隊の主力戦闘機として長年にわたり防空用途で運用しました。
このように、世界的に成功したF-4ですが、その大きな理由のひとつにはやはり「複座であること」は極めて重要な要素として挙げることができるでしょう。乗員が2人であったからこそ、迎撃能力を最大限に発揮できたのであり、F-4を全天候戦闘機として機能させる大きな要因になったのです。
また、そのような複座の構造と余裕のある大柄な機体だったからこそ、その後のアップデート化にも対応でき、結果として西側諸国の空を長きにわたり守る存在にまで昇華させました。
現代では、電子技術の飛躍的進歩により、F-35のような単座機でも高度なセンサーとコンピューターの支援を受ければBVR戦闘や多用途戦闘機としてのミッションを遂行できます。
しかし、かつてのF-4は、技術の限界を克服するために「人間の力」に頼る選択をし、それが成功へと繋がりました。複座だからこそ成し得た成功。それが、F-4「ファントムII」の偉大さを物語っていると筆者は考えています。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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