プロペラ機なんて時代遅れでは…←いいえ!「スカイレイダー」の名を継ぐ2代目 米軍が運用スタート

米空軍でこのたび、プロペラ低速の対地攻撃機OA-1K「スカイレイダーII」の運用が始まりました。ただ、同機は農業用の民間機を改造したプロペラ駆動の軍用機です。低速でステルス性もないのに、なぜ米軍は使おうとしたのでしょうか。

「スカイレイダーII」米空軍でどう使う?

 このような農業用の民間機に最新の電子機器を搭載することで、OA-1Kは戦場の「目」として機能するように仕立てられています。高度な光学・赤外線センサー、そしてデータリンクを装備しリアルタイムで戦場を監視。また、ハードポイントには誘導爆弾や対戦車ミサイルを搭載でき、これらによって精密な近接航空支援を実施可能です。

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翼下に搭載された「ヘルファイア」ミサイルおよび70mmロケット弾。誘導兵器による精密攻撃が可能だ(画像:アメリカ空軍)。

 アメリカ空軍は近年、高価なF-35やF-22といった第5世代ジェット戦闘機に多額の予算を投じてきました。しかし、これらの機体は対ゲリラ戦や低強度紛争において必ずしも効率的とは言えません。たとえば、F-35が一度の出撃で消費するコストは数百万円と膨大です。しかし、相手が少数の武装勢力である場合、そこまでの高性能は不要なことも多々あります。そうした作戦時に、OA-1Kはコスパ良く作戦の支援が可能です。

 運用コストの面でも大きな利点を持ち、燃料消費が少なく、整備も簡単で、何より機体そのものの価格が安価なのは大きな利点と言えるでしょう。加えて、C-17輸送機で空輸でき、数百mの直線道路、もっと言えばちょっとした広さの空き地があれば離着陸可能な優れた短距離離着陸能力も備えるなど、世界中で長時間の哨戒や近接航空支援のミッションを低コストで継続することを可能とします。

 こうした特殊な条件下で運用する飛行機だからか、OA-1Kの配備先はアメリカ特殊作戦軍隷下の空軍特殊作戦コマンドです。特殊作戦軍は、対テロ戦や不正規戦といった少数の精鋭による戦いを主要な任務としており、必要に応じて長時間空域に留まり、的確なタイミングで精密な攻撃を実施できるOA-1Kは、理想的な機体となる可能性が高いと言えます。

 なお、2025年4月3日には、アメリカ空軍特殊作戦コマンド(AFSOC)が、最初の任務仕様のOA-1K「スカイレイダーII」を受領したと発表しています。

「スカイレイダー」の名を受け継いだOA-1Kが、これからの戦場でどのように活躍するのか。旧世代機のコンセプトを新時代に適応させたこの機体の運命は、今後の戦場のあり方を示す試金石となるでしょう。

【米軍機と誤認しそう】これが「半世紀前に消滅した国」の「スカイレイダー」です(写真)

Writer:

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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