理不尽orしょうがない?「自衛隊パイロットになりたい願望」打ち砕く“制限”とは 米軍は撤廃、日本でも動きが

アニメやマンガなどでは子どもが大型ロボットなどの操縦席に乗り込むシーンが描かれたりします。翻って現実世界で、子供が戦闘機の操縦席に座った場合、各種レバーやペダルなどに手足が届くのでしょうか。

ついに日本で身長制限を撤廃する動きが

 アメリカ空軍も過去にはパイロットに対して身長制限を設けており、当時は163cm以上196cm未満という基準でした。この制限は、コクピットの設計における物理的な制約に起因するものであり、機体内でパイロットが安全かつ効果的に操縦できるために必要な基準とされてきました。

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アメリカ空軍パイロットのニック・ハリス少佐(左)とジェシカ・ワランダー大尉(右)。現在、アメリカ空軍には身長制限は存在しない(画像:アメリカ空軍)。

 しかし2020年にアメリカ空軍はこの制限を撤廃しました。その後は航空機を運用するのに十分な大きさであることを、個人ごとに測定したうえで選考しており、今では149cmという小柄な女性パイロットも存在します。

 これは、パイロットの人材確保という観点からも非常に重要な改革となりました。特に女性や小柄な男性の中にも、飛行機の操縦に必要な素質を十分に備えている人々が多くいるため、彼らを採用することで新たな才能を発掘することができるようになったからです。

 なお、国土交通省は2025年2月、パイロットを育成する航空大学校において158cmの身長制限を撤廃する方針を固めました。これは女性活躍推進という見地だけではなく、パイロット不足が大きな問題となっている航空業界において、より多くの人材を集める目的があると考えられます。

 とはいえ、極端に大きかったり小さかったりすると、やはりどうしてもカバーしきれない部分があることは事実です。機体の設計や安全性、操作の精密さを確保するためにも重要な要素であるためです。

 しかし、現代の空軍は、身長に関する制限を緩和する方向に進みつつあり、多様な体格の人々がパイロットとして活躍できる機会を得られるようになっています。これにより、より多くの才能を発掘し、さらなる全体スキルの発展が期待されます。

 子どもが戦闘機を操縦するというSF的なシナリオは、現実的な視点から見ると極めて難しいと言えますが、身長に関しては航空自衛隊も、前出のアメリカ空軍や航空大学校の流れを受けて、そう遠くないうちに撤廃・緩和する方向へ向かうのではないでしょうか。

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Writer:

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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