自衛隊の新装備「よく走る迫撃砲」の“弱点” ウクライナの教訓活かせず? アメリカは北欧製「迫撃砲システム」に熱視線
陸上自衛隊は、機動性を重視した車載式迫撃砲「24式機動120mm迫撃砲」の導入を進めています。しかし、ウクライナ戦争の戦訓から、将来の戦争ではさらなる機動性が求められるとも。そこでアメリカは別のタイプの迫撃砲を試験導入しています。
アメリカが注目する北欧製の“新型自走迫撃砲”とは
さらに、戦場における新たな脅威が24式機動120mm迫撃砲の生存性を脅かすかもしれん。

24式機動120mm迫撃砲はキャビン内部に22R2Mを搭載しており、射撃の際は停車して車体上面のハッチを開いて砲弾を発射します。近年では、対砲レーダーの性能向上に加えて、ドローンを用いた迫撃砲発射位置の特定も行われており、24式機動120mm迫撃砲のような停車して射撃を行う自走迫撃砲の生存性は低下しています。
また、ウクライナ戦争では発射後いったん上昇してから車体上部を攻撃する「トップアタック」能力を持つミサイルや、徘徊型弾薬(自爆型ドローン)などによる、装甲車両で最も装甲の薄い車体上部への攻撃が両軍で多用されています。前に述べたように24式機動120mm迫撃砲は射撃時に車体上面のハッチを開きますので、車体上面の防御力は走行中よりもさらに脆弱になります。
こうしたウクライナ戦争の戦訓などを踏まえて、アメリカ陸軍では戦車のような全周旋回式砲塔に迫撃砲を搭載する装甲車の導入を検討しており、2024年9月にフィンランドのパトリアが開発した滑腔砲型120mm迫撃砲システム「NEMO」をAMPV装甲車に搭載して試験を行っています。
迫撃砲は本来、移動しながらの射撃や、目標が見える状態での「直接射撃」には適していないのですが、NEMOはこれらの能力も備えているだけでなく、ほぼ同時に6発の砲弾を命中させる能力も備えています。
アメリカ陸軍は、履帯で走行するAMPVにNEMOを搭載して試験を行っていますが、NEMOは陸上自衛隊が導入する「AMV XP」のようなタイヤで走行する装甲車にも搭載できます。防衛省・陸上自衛隊が継戦能力と操作する隊員の生存性の向上を重視するのであれば、幅広いプラットフォームに搭載が可能なNEMOを装備する自走迫撃砲の導入も検討すべきなのではないかと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
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