「謎のスキ間」F-35戦闘機で消え去ったワケ その影響とは そもそも何のために必要だった?
2025年現在、航空自衛隊が保有するF-2やF-15、F-35の3機種の戦闘機を見比べると、F-35だけ空気取り入れ口が異なることに気が付きます。同機だけ空気取り入れ口が胴体と密着しているのはなぜでしょうか。
三角形の膨らみがダイバータの代わり
機種によっては、さらに空気取り入れ口直前に無数の小穴を設けた「スプリッターベーン」と呼ばれる板状の部品を設置し、境界層を切り分けて穴から吸い込み排除する例もあります。古くは「F-4ファントムII」、現用機ではF/A-18のA~D型いわゆる「レガシーホーネット」や、ユーロファイター「タイフーン」が代表的な存在です。

アメリカの現用戦闘機を見てみると、F-22までは空気取り入れ口と胴体とのあいだに隙間を設ける設計手法が採用されていますが、同じステルス戦闘機であるF-35の場合、空気取り入れ口は胴体と隙間がありません。
ただ、だからといって境界層対策をしていない訳ではなく、また別の手法が用いられているのです。
F-35の空気取り入れ口直前をよく見ると、三角形の膨らみがあります。この膨らみによって境界層を「押しのける」ことで、エンジンが境界層を吸い込まないようにしているのです。このような手法を用いた空気取り入れ口のことを「ダイバータレス超音速インレット(Diverterless Supersonic Inlet:DSI)」といいます。
ダイバータレス超音速インレットを量産機で初めて採用したのは、中国とパキスタンが共同開発したJF-17「サンダー」(中国名FC-1梟竜)でした。F-35では、この膨らみがレーダー波を反射しやすいエンジンのファン部分を隠すため、ステルス性向上の目的でも採用されています。
境界層は高速で飛ぶジェットエンジンが吸い込むと有害ですが、同時に主翼においてはフラップなどの高揚力装置で制御し、活用されています。現代のジェット戦闘機は、境界層とうまく付き合いながら飛んでいるといえるでしょう。
Writer: 咲村珠樹(ライター・カメラマン)
ゲーム誌の編集を経て独立。航空宇宙、鉄道、ミリタリーを中心としつつ、近代建築、民俗学(宮崎民俗学会員)、アニメの分野でも活動する。2019年にシリーズが終了したレッドブル・エアレースでは公式ガイドブックを担当し、競技面をはじめ機体構造の考察など、造詣の深さにおいては日本屈指。
ダイバータレス超音速インレット初めて知りました。勉強になります。
P-51のラジエーターも同じ理由で胴体から離れていますね。なので前半部分の話はちょっと違和感を感じました。