「史上最後に完成した戦艦」なぜ? 「“意地”で“維持”しよう」と頑張っちゃったら不遇の結果に
現在は消滅してしまった「戦艦」という艦種。このカテゴリで最後に完成した船は、フランス海軍のリシュリュー級戦艦の2番艦「ジャン・バール」です。同艦は、建造中の扱いや就役後のタイミングの悪さなどで「不遇艦」と呼ばれることもあります。
爆撃により大きく損傷し戦時中は放置される
このトーチ作戦中のカサブランカ沖海戦で「ジャン・バール」は、アメリカ海軍の重巡洋艦「オーガスタ」に主砲での砲撃を試み退却させたものの、主力艦を下げたアメリカ海軍の艦載機による急降下爆撃で複数の爆弾が直撃し、撃沈こそ免れますが浸水により着底します。

その後、同艦は自由フランス軍所属として、再び連合軍側になりますが、太平洋方面に展開していた姉妹艦の「リシュリュー」に同艦が搭載するはずだった主砲を渡すなどしたため、大戦中はそのまま放置されることになりました。
再び完全な戦艦としての就役の道が開けたのは1945年8月25日で、浮揚されシェルブールへ回航のうえ、同艦の建造が再開されることになりました。
この際、実は空母に改造するプランもありました。ただ艦載機が50機程度しか搭載できないとして建造費に見合わないという批判があり、当時のフランス議会は戦艦として建造することになりました。
戦時中にドイツに一度敗れ政治的混乱があったとはいえ、未だにフランスは、アフリカや太平洋にある広大な植民地と利権を有しており、それらを維持するには強力な軍艦が不可欠でした。ただ、空母化よりもあえて高い建造費を支払って、“時代遅れ”ともいえる戦艦を建造することに関しては、当時から金の無駄であるという論調もあったようです。しかし、古い海軍思想に基づいて半ば意地を見せるかのように同艦は建造されることとなります。
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