「飲酒運転でした」日本郵便が謝罪 でも法的には責任ナシ!? 運送業界で郵便バイクが抱える“大矛盾” 国交省も認める
日本郵便がバイクで配達していた乗務員の「飲酒運転」を認め謝罪。基準値以下であっても、物流事業では業務中に呼気からアルコールが検知されないことが当たり前になっています。実は郵便バイクは、そうした法規制の対象外です。
点呼すり抜け→追いかけてアルコールチェック
「飲酒運転は決して許されない悪質な行為であり、社内規定により厳正に対処します」

日本郵便は、2025年4月27日に発生した郵便配達員の呼気からアルコールが検知されたことを重く見て事案を公表、こうコメントしました。
飲酒運転を指摘されたのは、新宿郵便局に勤務するバイク乗務社員です。昼勤帯と呼ばれる午前中遅めの出社で、朝10時から10時30分の間に点呼を受けることになっていました。点呼は担当区域の郵便物を仕分けした後、内勤社員である運行管理者から受けます。
しかし、この乗務員は点呼を受けずに午前中の配達へ出発。その理由を「運行管理者が多忙だったためと話している」と日本郵便は説明します。その後、運行管理者は記録簿を点検する中で点呼漏れがあることを発見し、同日12時20分頃、配達中に公道上まで追いかけて点呼を行い「アルコールチェックで飲酒運転を発見した」(前同)としています。呼気中から0.05mgのアルコールが検知されました。
アルコールが検出されると、通常は当日の乗務に就くことはできないので、乗務員の悪質性が際立つような話です。ところが、結論からいうと乗務員も日本郵便も法的責任を問うような規制はありません。
公表されたコメントのとおり、社内規定でしかないのです。日本郵便の事業は、貨物運送でありながら、事業で使う車両の主力はバイク。ですが“緑ナンバー”ではありません。これには理由がありますが、通常の運送事業者には許されない甘さが問題です。
道路交通法の飲酒運転となる基準は呼気1リットル中0.15mg以上なので、今回の事案は、走行そのものは違反には問われません。それでも物流、旅客を問わず、運送事業では呼気にアルコールがある状態で乗務は厳禁。物流事業の安全を確保するための「貨物自動車運送事業法」では、事業者に対して乗務員に対する運行管理を厳しく定めているので、これに違反していることが考えられます。
同時に、同事業法は事業者に対して始業前の「点呼」で免許証の確認やアルコールチェックを義務付けています。点呼を回避した場合、乗務員だけでなく、運行管理体制にも問題があると考えられ、事業者の責任も問われます。
ところが、この法律は自動車を対象とすると定めながら、もうひとつの条件として「二輪の自動車を除く」(※郵便のような一般貨物自動車運送事業の場合)と、郵便の原付バイクを規制の対象外としているため、今回のケースは事業法の規制にも触れることはありません。
通常の点呼では、アルコールチェックだけでなく、運転免許証の有無、車検のある車両については車検期間であることもチェックの対象です。記録簿も保管の義務があります。それがすべて不問に付されているのです。
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