「ホントに使えるのか?」だった“元祖ヘリコプター”が大冒険しちゃった件 「得体の知れない乗り物」はこうして実用化した

万博ではすべて飛行中止に追い込まれた「空飛ぶクルマ」のように、ヘリコプターもかつては将来性が疑問視された乗りものでした。その中で最初に量産にこぎ着けたドイツのがFa223「ドラッヘ」です。名前の割に繊細な機体でしたが、戦争では“結果的に”大冒険もしています。

敗戦直前に余儀なくされた約1700kmの大冒険

 再び竜が飛んだのは1945年2月25日の総統特別命令とされる、ベルリンのテンペルホーフからダンツィヒ(現:ポーランドのグダニスク)までの飛行です。任務内容は明らかになっていませんが、党大管区指導者(ガウライター)カール・ハンケの救出ではないかと言われています。

 ベルリン-ダンツィヒの直線距離は約400kmでしたが、ソ連軍が迫っており、Fa223の試験飛行から担当するベテランのヘルムート・ゲルステンハウアー中尉と2名の搭乗員は、自らを「天に召された部隊」と自嘲したそうです。

 2月26日に離陸し、途中6回の離着陸で整備と補給、天候回復待ちを繰り返し迂回しながら約980kmを飛行して3月5日にダンツィヒ郊外へたどり着きます。しかし戦況は悪化し待機を余儀なくされます。その間、不時着した戦闘機パイロットを捜索救助する活躍も見せます。

 3月6日に任務中止、ポツダムの西方ヴェルダーの訓練飛行場まで撤退するよう命じられますが、燃料の補給も受けられませんでした。3月9日になって地上部隊からなんとかドラム缶でガソリンを入手したゲルステンハウアー中尉は、ドラム缶をそのまま機内に積み込み、手動ポンプで給油しながら飛行するという荒業に出ました。その頃には管制部門とも連絡が取れなくなり自己判断で飛行を強いられる有様でしたが、3月11日の朝ヴェルダーに到着します。

 総飛行距離1675km、総飛行時間16時間25分という大冒険となりました。敵軍の目をかいくぐり、悪天候という過酷な条件でしたが、機構的な問題は発生せず、「天に召された部隊」は図らずもヘリコプターの柔軟な運用性を実証した形となりました。もっとも2か月を経ずしてドイツは敗戦します。

 Fa223の終戦時稼働機は3機でした。1機はドイツ軍が破壊しますが、アメリカとイギリスがそれぞれ1機を鹵獲(ろかく)します。イギリスは本国に移送するのに輸送船の余裕がなかったため、捕虜となっていたゲルステンハウアー中尉の操縦で1945年9月6日にイギリスへ。ヘリコプターによる世界初の英仏海峡横断という冒険でした。

 ちなみにアメリカに鹵獲されたFa223については、その後の記録がありません。アメリカはシコルスキーがVS-300というヘリコプターを開発しており、Fa223にはあまり関心がなかったようです。

 イギリスに渡ったFa223は、10月3日に墜落して全損しています。飛行25時間ごとにエンジンを固定する鋼製ハウジングを特別なツールを使用して締める必要がありましたが、そのツールをドイツに残置したままで整備不良だったのが原因とされています。いかにもドイツらしい手間がかかる繊細すぎる竜でした。

 Fa223は繊細な取り扱いが必要でしたが、なかなかどうして冒険も経験して、将来の可能性を秘めていました。実際にヘリコプターは5年後、ターボシャフトエンジンの登場により一気にブレイクスルーしました。一方将来の見えない「空飛ぶクルマ」は、どんな可能性を秘め、ブレイクスルーすることはできるのでしょうか。

【ガラス張り】これが元祖ヘリコプター「ドラッヘ」の操縦席です(写真)

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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