日本近海で「核爆弾を空母からドボン!」米軍やっちまった案件 60年経つも行方不明のまま 日米間の外交問題に

米海軍の空母「ハリー・S・トルーマン」が2025年4月28日、搭載するF/A-18E戦闘機を海に落としました。しかし、かつて米海軍は日本近海で核爆弾を海没させる事故も起こしていたのです。しかも当初は日本に報告しませんでした。

16年経ってようやく事故を公表

 この種の核爆弾は高度に複雑な起爆機構を有しており、外部からの衝撃や経年劣化によって爆発する可能性は極めて低いと考えられます。しかし、冷戦下における同盟国日本の近海において、実戦用核兵器を搭載した軍用機が失われたという事実は、アメリカ軍の機密保持体制と、日本政府への事後通告の有無という両面において、倫理的・政治的に大きな問題を孕んでいました。

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2025年、イエメン沖に展開中の「ハリー・S・トルーマン」から発艦するF/A-18E/F「スーパーホーネット」(画像:アメリカ海軍)。

 実際、この事故が公式に明らかにされたのは、事故から16年を経た1981年のことであり、それまでの間、アメリカ政府は情報を公にしませんでした。「公海上での事故」であるとの見解が、日本政府へ報告しなかった大きな理由であったと考えられますが、日本の領海に極めて近接した地点での核兵器紛失という重大事に対する説明責任の欠如は、日米間の外交問題に発展します。

 なお、こうした事故においてアメリカ海軍は、状況によっては失われた機体の回収に動きます。最近の例としては、2022年1月24日に空母「カール・ビンソン」で起きた事故が挙げられます。

 このときは、着艦しようとしたF-35Cステルス戦闘機が南シナ海に墜落しました。これを受け、アメリカ海軍はサルベージ能力を持つ民間船をチャーターし、約1か月後には機体を引き上げています。ここまで迅速に対応した大きな理由は、F-35Cが最先端のステルス技術と電子装備を搭載していたことから、中国などの対抗勢力による技術回収を防ぐことが主眼であったとされます。

 今回、F/A-18E「スーパーホーネット」が滑落したアデン湾海域は比較的水深が浅く、また墜落ではなく滑落であることから機体が破壊されずに沈んでいるはずであり、そのため、アメリカ海軍が将来的に回収作業を行う可能性はあり得るでしょう。

 そこから鑑みるに、1965年の鹿児島県沖におけるA-4攻撃機の落下事故では、沈没地点が水深5000mという深海でなければ、最低でも核爆弾だけでも捜索し回収したかもしれません。

【日本のすぐ近くじゃん!】ここが核爆弾が眠ったままの海域です

Writer:

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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