WW2に実在した“クマの兵士” 動物なのにガチで人間扱いの「一般兵」となった理由とは?
人間が戦場で使役する動物とは一線を画し、一兵士として人間と同等に階級を持ち、戦場で働いた“人間以外の兵士”がいます。それが「ポーランド軍の英雄」と呼ばれたヒグマのヴォイテクです。
このまま動物扱いでは船で運べない…ならば!
ヴォイテクの主な仕事は弾薬の運搬でした。体長は約180cm、体重は250Kg以上あり、パワーも人間の兵士以上だったといいますから、人間には運ぶのが大変な砲弾の入った弾薬箱を運ぶのも軽々だったようです。

ポーランド兵たちに可愛がられながら過ごしたヴォイテクは、各地を転々としました。このときの交流の記録なども残っており、兵士たちと格闘技に興じていたといわれています。また実戦においても、北アフリカ戦線で紛れ込んだスパイを発見するというお手柄をあげたこともあります。
こうして部隊になじんでいったヴォイテクの名は、次第に広くポーランド軍、ひいては連合国軍に知られるようになっていきました。
連合国軍によるイタリア上陸作戦が開始されると、ポーランド軍の輸送部隊もその作戦に参加することになりました。しかし、輸送艦で動物を運ぶことは禁じられていたため、ヴォイテクはついていくことができません。そこでポーランド軍司令部は一計を案じ、ヴォイテクを二等兵に任命します。正式に軍籍番号と軍隊手帳を発行し、ポーランド軍の兵士として船に乗せたのです。
正式にポーランド軍人となったヴォイテク二等兵は、人間にもなかなかできない大きな活躍をします。1944年1月から5月にかけてイタリアで起こったモンテ・カッシーノの戦いにおいて、ヴォイテクはほかの兵士たちとともに、弾薬の運搬を行ったといいます。
ヴォイテクは45Kgもある弾薬箱を軽々と持ち上げ、また一発10Kgの25ポンド砲弾を何往復もしてトラックから運び出し砲撃手に渡していったといいます。戦場は足場の不安定な山岳地帯でしたが、それでも一度も落としたりすることはなかったと言われています。
砲弾が飛び交い大きな発射音や爆発音が響く戦場でも、ヴォイテクはひるむことなく、驚いて味方兵士を傷つけるといったことも一切なかったといいます。
このモンテ・カッシーノの戦いでの功績でヴォイテクは伍長に昇進。さらに、ヴォイテクの所属する第22輸送中隊は、「砲弾を持つクマをかたどった紋章」を公式シンボルとすることが軍司令部に認められました。
モンテ・カッシーノの戦いから約1年後、ドイツが降伏し欧州での大戦は終結します。ただ、ヴォイテクがポーランドに凱旋することはありませんでした。
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