船が足りない! 息を吹き返した日本の「造船」 絶好調の大手に“次なる野望”を聞いた
日本の造船大手・常石造船の決算がこれまでにない好成績を収めるなど、造船業界に追い風が吹いています。中韓に押されていた日本の造船が息を吹き返した要因は何でしょうか。同社はさらなる事業拡大を狙います。
「21世紀に誕生した国」に造船所
日本の造船業全体を見渡すと、一時期の危機的な状況から脱しています。日本船舶輸出組合によると、2024年の輸出船契約実績は1116万総トンとなっており、2021年から4年連続で受注量1100万総トン超を記録しました。手持ち工事量も3年以上を確保し、旺盛な新造船需要に対して建造船台が不足するような状況です。

こうした中で常石グループは、2002年に独立国となった東ティモールに新しい造船所を整備する方針を決めています。すでに現地法人として「ツネイシ・ティモール・シップビルディング(TTS)」を立ち上げており、2026年には工場建設を開始。2028年には第1番船を引き渡す予定です。
奥村社長は「将来ここ(東ティモール)でカムサマックスの連続建造をしていきたい。建造能力は年10隻程度を想定している」と述べました。
一方で国際海運の2050年カーボンニュートラル実現に向け、常石グループは2035年までに建造する全船を次世代燃料に対応した船にする方針を掲げています。
常石造船常石工場では5月13日に世界初のメタノールDFウルトラマックスバルカー「Green Future」(約6万5700重量トン)が竣工。同工場では水素燃料タグボートの建造も進められています。
また、LNG(液化天然ガス)燃料では8万2000重量トン型のカムサマックスバルカーを受注済み。アンモニア燃料船も商船三井などと研究開発を行い、中型アンモニア・LPG 輸送船の基本設計承認(AiP)を日本海事協会(NK)と英船級協会ロイド・レジスター(LR)から取得しました。
奥村社長は「新燃料については現在までメタノール燃料船を多く受注し、建造を進めているが、今後どれが主流になっていくのかはまだ見通せない。そのため全方位で研究開発をしている」と話しています。
さらに、常石グループでは常石工場での客船新造も視野に入れています。同社は今後のロードマップに、生産ラインの自動化を進めつつ2027年から建造ドックを客船仕様に改造し、2030年から実際に客船の建造を行うことを明記しました。
奥村社長は具体的な船型について「守秘義務があって話すことができない」としつつ、「常石工場で今後もバルカーだけを造り続けていてはダメだろうなというのは、以前から課題としてあがっていた。RORO船なども考えているが、選択肢の中の一つが客船だ」と説明しました。
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