東南アジアの「ロシア兵器大好き国」が方針転換? かつての敵国に“最新戦闘機ちょうだい” 一体なぜ?
いまから半世紀ほど前、アメリカと熾烈な戦いを繰り広げたベトナムが、なんとF-16を導入しようとしているといいます。なぜ、かつての敵国から最新の戦闘機を導入できるまでに至ったのでしょうか。
旧ソ連/ロシア系の兵器体系なのになぜ?
2020年代も半ばを迎えた現在、地政学の座標軸はかつてないほど複雑に交差し始めています。その象徴のひとつに挙げられるのが、かつて血で血を洗うほど激しい戦いを繰り広げた国、ベトナムとアメリカのあいだで囁かれる「戦闘機交渉」の報です。ベトナム空軍がアメリカ製F-16戦闘機の導入を真剣に検討しているというのです。

ベトナムとアメリカ。この二国の関係史において「和解」という言葉が語られるようになって久しいですが、それでもアメリカ製の戦闘機が社会主義体制を維持するベトナムという国の軍隊で運用されるかもしれないという可能性は、まさしく「歴史の皮肉」と呼ぶにふさわしいのではないでしょうか。また、その皮肉の裏に何があるのでしょうか。
そもそも、ベトナム人民軍空軍(VPAF)は長らくソビエト連邦、そしてその後継国であるロシアからの装備供与に大きく依存してきた経緯があります。そのため、装備体系は基本的に旧ソ連/ロシア式で、銃砲弾の口径からジェットエンジンの規格まで、いわゆる旧東側の体系です。主力戦闘機を見てみても、そこに並ぶのはSu-22やSu-30MK2Vといった「スホーイファミリー」です。
しかし、近年この構図に綻びが生じているようです。最大の要因は稼働率の低下で、とりわけSu-30の部品供給が滞り、機体整備の水準が維持できなくなっていると噂されます。
原因は明白です。2022年以降のロシアによるウクライナ侵攻と、それに伴う国際的な経済制裁です。ロシアの防衛産業は今や自国向け装備の補充に追われ、対外支援には手が回らない状態にあると推測されます。とりわけベトナムのような「旧友」への優先度は低いと言えます。
また、ロシアの兵器産業そのものも西側諸国による半導体・電子機器禁輸措置の影響を大きく受けており。結果として、最新の電子装備を備えた機体や部品の製造に支障が出ています。こうしたことを鑑みると、ベトナム空軍が信頼できる供給源をロシア以外に求め始めたのは必然といえるでしょう。
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