東南アジアの「ロシア兵器大好き国」が方針転換? かつての敵国に“最新戦闘機ちょうだい” 一体なぜ?

いまから半世紀ほど前、アメリカと熾烈な戦いを繰り広げたベトナムが、なんとF-16を導入しようとしているといいます。なぜ、かつての敵国から最新の戦闘機を導入できるまでに至ったのでしょうか。

アメリカとベトナムの関係値は過去最大にまで向上

 このような背景のもと浮上したのが、F-16という西側の代表格ともいえる戦闘機の導入です。F-16はすでに4000機以上の生産実績があり「成熟した機体」「比較的低コスト」「整備体制の安定性」という観点で、世界で最も高く評価されています。最新型のF-16Vに至っては、F-22「ラプター」やF-35「ライトニングII」などといった第5世代戦闘機に匹敵するアビオニクスとネットワーク連携能力を備えており、東南アジアの空においても強力な抑止力となり得ます。

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最新鋭のF-16Vブロック70/72「ファイティングファルコン」F-35に匹敵するセンサー類を搭載する第4.5世代戦闘機として知られる(画像:ロッキードマーティン)。

 ベトナムにとってF-16導入の意味は単に機体性能だけでなく、かつて敵として対峙した超大国との戦略的な「和解」を、航空戦力の中枢において体現するという外交的象徴にほかなりません。

 事実、アメリカとベトナムの安全保障協力は近年、急速に進展してきました。2016年にはオバマ政権が対ベトナム武器禁輸を全面解除し、以降は装備の提供が進んでいます。2023年にはバイデン大統領がハノイを訪問し、ベトナムは両国関係を最上位の「包括的戦略パートナーシップ」に格上げしています。

 東南アジアにおける安全保障環境は、過去半世紀で最も危機的な状態です。南シナ海における中国の海洋進出は、ベトナムにとって現実的な脅威であり、ベトナムはその独立を守るために、もはや「旧来の友人」であるロシアにのみを頼ることはできません。

 半世紀前、ベトナムの空にはB-52が飛び、首都ハノイの街は絨毯爆撃を受けていました。それが今、同じ空にアメリカが誇る戦闘機が配備される可能性が現実のものとなりつつあります。

 このような、歴史の記憶と社会情勢の変革の狭間で、冷静かつ戦略的に国家防衛を再構築しようとするベトナムの姿勢は、太平洋戦争後にまるっきり変容した日米関係になぞることができるのかもしれません。

【もはや別モノ!?】これが最新! F-16Vのコクピットです(写真)

Writer:

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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