ウクライナ戦争で判明!「ドローン迎撃にジェット戦闘機」でパイロット落命のリスクが 解決策はあるの?
ウクライナ空軍がF-16戦闘機を失ったと発表しました。3機目の損失となる今回の原因はドローンを迎撃したことによる事故だとか。パイロットは脱出し無事のようですが、戦闘機が機関砲でドローンを迎撃するのはリスクが高いようです。
ミサイルより低コストな「誘導装置+ロケット弾」
機関砲とは本来、至近距離における目標への攻撃に使われます。高速で接近する敵機を至近距離で撃墜するための武器であり、ドローンのように小型で低速な目標を撃つには、精密さと熟練した技術が要求されます。さらに、命中弾によってドローンがバラバラになれば、破片が周囲に飛散するのは自明の理であり、戦闘機とドローンの速度差から接近しすぎた状態で撃墜したりすると、自機が損傷を受けるリスクもまた高まります。

今回のF-16墜落が、ドローン破壊後の破片接触、あるいは迎撃時の姿勢制御に失敗した可能性を示唆するのであれば、それは現代のドローンに対する機関砲での攻撃におけるリスクが顕在化したことを意味していると考えられます。
ドローンとの交戦における運用コストも決して小さくありません。ミサイルを使えばその費用は1発あたり数億円です。一方、機関砲で撃墜すれば機体自体に危険が及ぶ、この「どちらを選んでも損」という構造は、もはや戦術的な袋小路に陥ったのと等しいと言えるでしょう。
こうした状況において、代替案として浮上しているのが、「APKWS(Advanced Precision Kill Weapon System)」です。これは70mmロケット弾にレーザー誘導装置を組み合わせた低コストの精密兵器です。これは既存のハードポイントに装着可能で、軽量で大量に搭載できかつ高精度を誇る武器です。
本来、ロケット弾は空対地攻撃用でしたが、対ドローンにおいてAPKWSを使用する最大の利点は、ドローンという低コスト目標に対し、数億円のミサイルを撃つのではなく、数百万円で十分な打撃を与える手段を提供することです。また、それと同時に誘導と機関砲よりも長い射距離を提供することによって、自機の安全性を担保することが可能です。
APKWSによる対ドローン攻撃はアメリカ空軍のF-16やF-15などにおいてすでに実施され有効性が実証されています。ウクライナ空軍のF-16にも遠からず搭載される日がやってくるかもしれません。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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