「エイみたいな旅客機」なぜ使われない? メリット沢山なのに生まれないワケ「民間機すべて同じ形じゃないですか」
旅客機というと、円筒形の細長の胴体に、大きな主翼、そして垂直尾翼と水平尾翼というのが一般的な形状です。一方で、経済性に優れた全翼機などの別の形状も長らく検討されています。しかし、実用化されないのはなぜでしょうか。
軍用機ではすでに実績あり
では、民間航空機の技術革新は、もはや天井に達してしまったのでしょうか。実は、そうとも限りません。旅客機のシルエットを大幅に刷新し得るひとつの「革命的選択肢」が長年にわたり研究されています。それが「全翼機(Flying Wing)」や「ブレンデットウイングボディ」という形状です。

全翼機とはその名の通り、胴体と翼の区別を取り払い、機体全体を一枚の翼として設計するというものです。全翼機は空を飛ぶための「揚力」と、それを生み出すための副産物である「抗力(空気抵抗)」の比率、いわゆる揚抗比が大幅に改善される可能性を秘めています。
ちなみに、軍用機の世界ではすでに実用化されており、アメリカ空軍のB-2ステルス爆撃機が存在します。ブレンデットウイングボディは全翼機と翼のある飛行機の中間的な存在です。
B-2のあの独特なフォルムは、敵のレーダー網をかいくぐるステルス性のみならず、空力を極限まで効率化した結果でもあるのです。理論的には、全翼機またはブレンデットウイングボディ構造の旅客機を実現できれば、従来モデルの旅客機と比べて燃料消費を大幅に削減でき、また構造内部に無駄のない広大な空間を設けることで、より多くの乗客を収容することも可能になると考えられます。すなわち旅行者はより安価に、航空会社はより利益を求めることが可能になるのです。
しかし、全翼機やブレンデットウイングボディ機の旅客化という構想は、いまだ「夢」の域を出ていません。かつて全翼機は開発や飛行制御が困難であるという欠点を抱えましたが、現在では技術的な問題はほぼ解決しています。では、何が実現を阻んでいるのか。その理由はむしろ社会的・運用的な課題です。
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