ベンツの上にカモメが飛んだ~♪ 世界初「上に開く斬新ドア」誕生のヒミツ 実はデメリットだらけの“苦肉の策”
車体や地面に対して垂直に開く「ガルウィングドア」。今でも斬新な印象を受けるこのドアを最初に採用したのは、1955年に登場したメルセデス・ベンツ300SLでした。実は“苦肉の策”として生まれた構造だったのです。
あのドアはガルウィングじゃないの?
ただし、この独創的なガルウィングドアは、その後も車高の低い車の乗降性を高める目的で、一部の車種に採用され続けました。採用例は多くありませんが、レーシングカーで用いられることが多く、日本車ではマツダ・オートザムAZ-1(1992年)や、そのOEMモデルのスズキ・キャラ(1993年)などにも採用されています。

ちなみに、よくランボルギーニ・カウンタックなどのスーパーカーのドアが「ガルウイングドア」と混同されることがありますが、これは間違い。カウンタックのドアは、ドア前方の軸を起点に縦方向へ回転しながら開くもので、「シザードア」または「ランボルギーニドア」と呼ばれる別の機構です。ガルウィングドアとは開き方がまったく異なります。
シャレにならんデメリットもあるけども…!
ガルウィングドアは、一般的には実用性に欠け、通常のスイングドアに比べて耐久性も劣るとされています。また、万一の事故で車体が歪んだ場合は、ドアが開かなくなり、ドライバーや同乗者が脱出できなくなるおそれがあるなど、デメリットが目立つ構造のドアでもあります。
しかし、「ガチャンとドアを上に持ち上げ、シュッと運転席にまたがり、再びドアを閉めて颯爽と走り出す」……という一連の動作には、特別な高揚感があり「一度でいいから体験してみたい」と憧れる人はきっと少なくないでしょう。
Writer: 松田義人(ライター・編集者)
1971年、東京都生まれ。編集プロダクション・deco代表。バイク、クルマ、ガジェット、保護犬猫、グルメなど幅広いジャンルで複数のWEBメディアに寄稿中。また、台湾に関する著書、連載複数あり。好きな乗りものはスタイリッシュ系よりも、どこかちょっと足りないような、おもちゃのようなチープ感のあるもの。
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