「アルファロメオ+ランチア」に八丁味噌を少々!? 愛知生まれの “イタリア車” いろいろ残念でした
2001年にトヨタが発表した「ヴェロッサ」は、アルファロメオやランチアをモチーフにした“なんちゃって”イタリア車として誕生しました。ただ、肝心のスタイリングにまるで魅力がなく販売は低迷。トヨタはどうしたかったのでしょうか。
誰もニセモノなんか欲しくない! 仏作って魂を入れなかったか
「ヴェロッサ」のデビュー当時、筆者(山崎 龍:乗り物系ライター)はアルファロメオ「155」を所有しており、自宅に帰れば家人が所有する同「145」やフィアット「プント」のある環境で暮らしていました。

日常的にイタリア車に触れていると、ホンモノとのあまりの落差から「ヴェロッサ」は「出来の悪いイミテーション」にしか見えなかったのです。それは経営破綻後の名古屋港イタリア村と、本場イタリアのローマやミラノ、フィレンツェの美しい街並みくらい差があるものでした。
そのような「ヴェロッサ」が、ホンモノのイタリア車を愛好するファンの心に刺さるはずはありません。さりとて、無難で大人しいトヨタ車を好む国産車ユーザーからはキワモノ扱いされてしまい、販売が低迷したまま3年半でひっそりと姿を消しました。
結局、このクルマを購入した数少ないユーザーは、人と違ったクルマに乗りたいが、ただし国産車に限る!という人か、もしくはイタリア車に乗りたいが乗る勇気がなければ、輸入車を所有する甲斐性もない人だけだったのでしょう。
結局のところ、美とスピード、そして運転の快楽にしか関心のないイタリア車と、「お客様は神様です」とばかりに品質と信頼性、顧客満足度を何よりも重視するトヨタ車では、クルマとしての立ち位置が違い過ぎました。
模倣するにしても、ここまでキャラクター性が離れすぎていると、うまくいくはずがありません。そもそもクルマの成り立ちは、生産国の歴史や文化、伝統、国民性が大きく関わってきます。
イタリア車には唯一無二の独特な魅力があり、トヨタ車には安心感と言える固有の良さがあります。それを無視して表層だけをなぞっても出来上がるのは所詮フェイクで、オリジナリティが生まれるはずがないのです。「ヴェロッサ」の失敗は、そのことを端的に表していると言えるのではないでしょうか。
Writer: 山崎 龍(乗り物系ライター)
「自動車やクルマを中心にした乗り物系ライター。愛車は1967年型アルファロメオ1300GTジュニア、2010年型フィアット500PINK!、モト・グッツィV11スポーツ、ヤマハ・グランドマジェスティ250、スズキGN125H、ホンダ・スーパーカブ110「天気の子」。著書は「萌えだらけの車選び」「最強! 連合艦隊オールスターズ」「『世界の銃』完全読本」ほか」に
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