「温泉に耐えてます」開通当時は“東洋一のアーチ橋”、その下は“地獄!?” 高速道路からは気づかないスゴい橋とは
開通当時「東洋一のアーチ橋」とも呼ばれた橋が大分県に存在。この橋は“地獄”の名がつくほど強い酸性の温泉地帯に耐えながら、絶景を創り出しています。
どれくらいコンクリートが劣化するのか、から測った
こうした課題の解決のため、別府明礬橋の構造には「RC固定アーチ橋」が選ばれました。谷を渡るアーチが橋桁を支えるこの構造は、長いスパン(支間長)を可能とし、途中の橋脚をなくすことで温泉街から海を望む景観への影響を最小限にしています。

また、素材面の対策として、硫酸塩によるコンクリートの劣化への影響を調べるため、湯の花小屋の一部を借り受け、そこに鉄筋コンクリート片を置いて長期間のテストを行い、コンクリートの劣化を測定しました。
その結果、基礎コンクリートの腐食代(あらかじめ劣化を想定して余裕を持たせる寸法)を最大で21cm厚くしています。また腐食が進みやすい基礎橋台部のコンクリート表面には、エポキシ樹脂を結合材として耐腐食性を高めたエポキシモルタルを、1cm厚で塗布しました。
さらに、橋台部分のコンクリート量は4万立方メートルを超えることから、これが硬化するまでの温度変化によるひび割れをどう防ぐかも課題に。発熱量の少ない高炉セメントの採用や、通常の水に替えて砕氷を用い、コンクリート硬化時の温度変化を抑制するなどの工夫も行われました。
別府明礬橋の着工は1985年9月、竣工は大分道(当時)開通1か月前の1989年6月です。湯の花小屋でのコンクリート腐食試験をはじめた1978年から竣工まで、じつに11年近くを要するプロジェクトでした。
こうして完成した別府明礬橋は、デザイン面での工夫、材料面や工法の先進性などが評価され、1989年度の「土木学会田中賞」、1990年の「国際プレストレストコンクリート連合特別賞」を受賞しています。
この橋は、明礬温泉から見上げると堂々とした姿を眺められますが、東九州道を走っていると路肩に橋梁名を示す看板が現れるのみで、その姿は伺い知れません。別府湾SAスマートICもしくは別府ICから一般道に出て、明礬温泉に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
国道500号沿いにある「明礬地獄」の向かいの「岡本屋売店」の駐車場からは、春木川が作った谷をアーチで一跨ぎする別府明礬橋の優美な姿を一望にできます。この売店のお食事処で味わえる「元祖地獄蒸しプリン」「地獄蒸しプリンソフト(カラメルソースがけ)」は、これを求める人で行列ができることもある人気グルメです。
Writer: 植村祐介(ライター&プランナー)
1966年、福岡県生まれ。自動車専門誌編集部勤務を経て独立。クルマ、PC、マリン&ウインタースポーツ、国内外の旅行など多彩な趣味を通し積み重ねた経験と人脈、知的探究心がセールスポイント。カーライフ系、ニュース&エンタメ系、インタビュー記事執筆のほか、主にIT&通信分野でのB2Bウェブサイトの企画立案、制作、原稿執筆なども手がける。
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