「ぶどう色」の東上線が登場――あれ、“客車”にも「ぶどう色」ありましたよね? なぜ違う色に?
東武東上線の全線開通100周年企画として、「ぶどう色」に塗り替えた8000型電車が登場しました。同じ東武鉄道ですでに運行されている「SL大樹」の客車も同じ「ぶどう色」ですが、実は色合いが微妙に異なります。
東武を走る「もう一つのぶどう色」とどう違う?
東武は、日光エリアで観光列車「SL大樹」を運行していますが、2021年から「ぶどう色2号」に塗り替えた客車を連結しています。今回81111編成に塗られた「ぶどう色1号」が黒っぽい茶色なのに対して、「ぶどう色2号」は赤みのある茶色とされています。
いずれの色も、国鉄(日本国有鉄道)で採用されていた色で、1950年代は「ぶどう色1号」が客車に、「ぶどう色2号」は電気機関車や電車に塗られていました。
1950年代後半には客車も「ぶどう色2号」に塗られるようになりましたが、「SL大樹」は1950年代後半から1960年代前半(昭和30年代)の客車の色を、今回登場した「ぶどう色1号8000型」は1920年代の客車の色をそれぞれ再現したために、電車と客車の関係が逆になっています。
今回、「セイジクリーム」から「ぶどう色1号」に塗り替えられた81111編成ですが、先の通り、「セイジクリーム」の復刻は東上線開業100周年を記念したものでした。
東上線は、東上鉄道の手によって1914(大正3)年5月に池袋から田面沢(たのもざわ)のあいだで開業したのが最初です。この開業から100周年を記念したのが先の「セイジクリーム」の復刻塗装でした。なお、当時の終着駅だった田面沢駅は入間川の東岸、現在の川越市~霞ケ関間にあった駅とされています。その後延伸を重ね、1925(大正14)年7月には寄居まで開業して、池袋~寄居間の全線が開通しています。
2025年7月13日には臨時列車「東上線全線開通100周年記念ツアー」が運転され、東上線の車両基地の森林公園検修区内では「ぶどう色1号8000型」と50090型を並べた撮影会も行われました。
この撮影会の後、「ぶどう色1号8000型」は東上線の森林公園~小川町~寄居間で営業運転に就きましたが、今後は越生線でも使用される見込みです。営業運転を開始した日は日曜でもあり、沿線や駅でこの車両を撮影するファンの姿も見られました。
Writer: 柴田東吾(鉄道趣味ライター)
1974年東京都生まれ。大学の電気工学科を卒業後、信号機器メーカー、鉄道会社勤務等を経て、現在フリー。JR線の2度目の「乗りつぶし」に挑戦するも、九州南部を残して頓挫、飛行機の趣味は某ハイジャック事件からコクピットへの入室ができなくなり、挫折。現在は車両研究が主力で、技術・形態・運用・保守・転配・履歴等の研究を行う。鉄道雑誌への寄稿多数。資格は大型二種免許を取るも、一度もバスで路上を走った経験なし。
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