鉄オタの下心「車両基地で“電車の音”を録りたい!」それだけじゃ到底終わらない!? 耳でも楽しめる「方向幕コレクション」の驚くべきこだわり
鉄道ファンにちょっとしたブームを起こした「方向幕ソフト」の第6弾が発売されました。本作品は実際の作動音も収録された本格派。作者の奥田さんに「音のこだわり」を聞きました。
ゲーム機用だから「車両基地に入りたい」?
――森ノ宮で、収録中に雑談で「音を収録させてもらえたら車両基地に入れる」という、鉄オタの下心があったとおっしゃいましたね。

奥田:第1作を作るために近鉄さんへ提出した企画書に「できれば警笛を鳴らす機能を入れたい」とさりげなく入れてあって、この段階から下心が透けてるんですよね(笑)
――ゲーム機用に作るなら音が必要という、ゲームメーカーとして当然の考え方があって、そこにコッソリ鉄オタの下心を挟み込んだと(笑)
奥田:プロデュース視点で、商品としてフック(魅力)がもう一つ欲しいと思いました。「電車が大好きだった幼少期の自分だったら、どういう機能が欲しいか」と考えた時に「音が鳴ったら楽しいな」と思って。特に電気笛(警笛)は事業者さんごとに特色があるので、各鉄道会社さんの音にしたことで、年齢問わず喜んでいただけたようです。
――収録取材で「電車の音って警笛以外にもいろいろあるな」と改めて思いました。
奥田:あれもこれも入れるとなると際限なくなるので、収録は停車中に録れる音に限っています。幕コレのサウンド再生機能だけで駅に停車してから発車するまでのルーティンは再現できるようになっています。
――SNSの評判を見ると、「懐かしい」や「子どもがずっと再生してる」「方向幕で漢字や読み仮名を覚えた」などのエピソードがたくさんあります。一方で、音鉄さんからは「この車両の音は違うのでは?」というツッコミもありますね。方向幕がテーマだから、方向幕を収録できても、録音できない車両もあると思いましたが。
奥田:例えば西武2000系のように製造数が多い形式だと、製造時期や更新状態でドアエンジンが違うんですね。そのため、取材で録音できたデータを優先して収録しています。申し訳ないですが、この精度を上げると制作コストも際限なく上がるため、マニアにしか分からないであろう差分については割り切っています。日頃より公式のXアカウントから「音についてはゆるく楽しんでください」とアナウンスしています。
――やっぱり限界ってありますよね……。収録できない音は入れないという、正直な選択もあると思いますが、本作の趣旨は「クルクル回そう、楽しもう」ですからね。無音という選択はないですよね。
奥田:ただし、今回収録している103系の戸閉めの音については、応荷重装置の起動する「チッ」という音が鳴るタイミングが違うことが分かりました。網干総合車両所加古川派出所で取材した加古川線の103系と、大阪環状線を走った車両なんですが、最後に環状線や大和路線系統を走っていた103系を比較して、体質改善や延命工事を行った103系用の音については編集して合成したデータを使用しています。一応有識者の方々に音を聞いてもらい大丈夫とお墨付きをいただいています(笑)。
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