鉄オタの下心「車両基地で“電車の音”を録りたい!」それだけじゃ到底終わらない!? 耳でも楽しめる「方向幕コレクション」の驚くべきこだわり

鉄道ファンにちょっとしたブームを起こした「方向幕ソフト」の第6弾が発売されました。本作品は実際の作動音も収録された本格派。作者の奥田さんに「音のこだわり」を聞きました。

プロデューサーに聞く方向幕のこだわり

「くるくる回そう!方向幕コレクション for Nintendo Switch」シリーズのこだわりについて、奥田さんに聞きました。

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カエルパンダの奥田覚さん(杉山淳一撮影)

――音は現地取材でした。方向幕は実物を借りて自社でスキャンしているそうですね?

奥田:第1作の近鉄さんの許諾を取得するときに、幕のデジタルマスターデータが存在したら、それを出していただこうと思ったんです。でもそれはダメでした。ところが、「実物なら貸せるよ」ということで、最初は先方からのご提案でお借りできました。

――貸し出しなんて無理だろうと思ってデータを借りようと思ったら、むしろ実物を貸してくれた。これは鉄道ファンとしてはうれしかったのでは?

奥田:近鉄の時に「もじ鉄」の石川祐基さんに解析を手伝ってもらったところ、方向幕に使われる文字はDTPフォントが流通する前の写植時代のフォントだったとか、職人さんのレタリングもあるんです。DTPフォントでの再現は難しいと判明したので、1コマずつ取り込んでデータ化する方法が、最も遠回りに見えて、実は一番効率の良い方法という結論にたどり着きました。基本的にシリーズ通してこの方法を取っています。最初に近鉄さんで至れり尽くせりな対応をしていただいたおかげで、他の事業者さんも同じような対応をしていただいています。

――本物にこだわるところも本シリーズの特長ですね。ゲームで言うところの「リアリティ(再現度)が高い」ですね。

奥田:JR系は幕をお借りするのが難しいと早々に判明していました。2024年末、プロジェクトが自治体の審査に通って補助金を頂けたので、その資金も使いながら廃品の方向幕を50万円分くらい買い集めて、それらを元に作っています。

――すごい。方向幕実物コレクションだ(笑)。

奥田:JR西日本さんがJR後に採用した、いわゆる「黒幕」は廃品が発生してもほとんど内部で処分されてしまいます。だから中古部品は希少なんです。でも幸いなことに行先部分のデザインについては一般流通のDTPフォントが使われていることが分かったので、今回収録している幕のコマの半分くらいは、解析を元に作成した再現データを使用しています。

――うーん、そこは妥協ですよね……。

奥田:その後、JR西日本の子会社で、方向幕を含む鉄道関連のデザインを手掛けている関西工機整備さんから、103系と201系の最終版の幕の一覧表や詳細な寸法の情報を提供いただけました。それらを元に解析結果と答え合わせをしつつ、調整しました。どうしても手に入らなかった「大和路快速」のコマは、関西工機整備さんから原盤データを購入のうえデータを作成しています。

――原盤データを買ったんですか! もう実物を作れちゃうじゃないですか(笑)。

【写真】「201系」を使った録音風景と方向幕

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