鉄オタの下心「車両基地で“電車の音”を録りたい!」それだけじゃ到底終わらない!? 耳でも楽しめる「方向幕コレクション」の驚くべきこだわり

鉄道ファンにちょっとしたブームを起こした「方向幕ソフト」の第6弾が発売されました。本作品は実際の作動音も収録された本格派。作者の奥田さんに「音のこだわり」を聞きました。

今回は警笛がベストコンディション

――本当だ。ここは聞き比べてほしいですね。できないところは割り切るけど、できるところまではとことんやると。ところで、森ノ宮でも周囲の音が入ってしまうなどで苦労されていましたが、他の路線でも苦心したところがあったら教えてください。

奥田:近鉄大阪線版(part1)を作った時に奈良線版(part2)で入ってなかった音を営業列車で録ったのですが、どうしてもいろんな音が被ってしまって、10時間以上粘って使えた音が10個くらいでした。車両基地の録音取材は冷房を切っていただけたりもするし、ノイズをある程度コントロールできる分、圧倒的に効率が良いので、車両基地で取材させていただくのがベストです。でも、車両基地はだいたい本線の横にあるので、運行頻度の高い路線だと、本線の列車が通過するたびに中断せざるを得ないですね。

――仕方ないですよ。10時間10個よりはいい。森ノ宮は2時間でほとんど録れましたし。

奥田:阪神さんの尼崎車庫は、昼間の尼崎駅で10分ごとに各方面の電車が到着して接続します。きれいなパターンダイヤのおかげで落ち着いて作業できました。西武さんの南入曽の車庫でニューレッドアローの音を録っている時は、入間基地を出入りする戦闘機の音と重なって録り直しました。

――それは西武さん悪くない(笑)。

奥田:周りが住宅地という車両基地のでは、大きな音が鳴る警笛を鳴らしていただくのは難しいこともあります。鳴らせても1回1発勝負とか、控えめな音とか。今回の森ノ宮の車庫は、周りに民家が少ないこともあって、初めて最大音量で警笛を鳴らしていただけました。

――なんと、今回は警笛がベストコンディション(笑)。ちゃんと収録されても、後で再生するとノイズがあって、そのままでは使えないのではと思いますが。

奥田:このシリーズはほぼ僕だけで作っているのですが、録音作業だけ専門家に外注しています。音響やマスタリングの本も書いているDavid Shimamoto君が録音を担当しています。彼がノイズを除去した状態で納品してくれるのでかなり助かっています。

 でも彼は鉄道ファンではないので、音響的に「良い音」だけど、鐵道趣味的にはイメージが違う音もあります。そのときは自分が録ったスマホの映像から抜き出した音をブレンドします。自分でもサウンド編集ソフトで作業するのですが、昔に比べるとノイズリダクション機能の性能が上がっていて、ソフトに処理を任せっぱなしにして80%くらいのクオリティでノイズ除去できます。昔ほどの苦労はないかもしれません。

 ソフトに機械学習やAIが搭載され始めてから、自動処理の精度が数年前と比べて格段に上がっています。幕のデータを取り込む時の画像処理もかなりツールに任せられます。5年前だったら本シリーズを作るのに数倍の労力が掛かっていたかもしれません。

※ ※ ※

 今回の「JR西日本編 ~大阪環状線・大和路線~ 鉄道方向幕シミュレーター」は、初のJR線です。しかも国鉄を知る世代には懐かしい作品です。ぜひ、音も楽しみましょう。

【写真】「201系」を使った録音風景と方向幕

Writer:

乗り鉄。書き鉄。ゲーム鉄。某出版社でゲーム雑誌の広告営業職を経て独立。PCカタログ制作、PC関連雑誌デスクを経験したのち、ネットメディアなどで鉄道関係のニュース、コラムを執筆。国内の鉄道路線踏破率は93パーセント。著書に『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。日本全国列車旅、達人のとっておき33選』(幻冬舎刊)など。

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