「貨物が主役・旅客は赤字」のアメリカで“とんでもない規模”の鉄道会社が誕生へ! なぜそんなに貨物が儲かる?
アメリカの貨物鉄道最大手が、同業4位の会社を買収すると発表しました。その額は約12.5兆円。旅客鉄道の業績低迷とは対照的に、アメリカではなぜ貨物鉄道がそれほど儲かっているのでしょうか。
貨物ウハウハ、旅客は赤字
アメリカ運輸省によると、2019年の国内貨物輸送手段のうち鉄道貨物のシェアは首位のトラック(39.6%)に次ぐ2位で27.9%に達し、運んでいる品目は石油や石炭などのエネルギー製品、自動車部品、建設資材、化学品、食品、紙・パルプなど多岐にわたります。他方で国土交通省によると、日本の2016年度の貨物輸送量のうち鉄道は0.9%と自動車(91.4%)に大差を付けられています。

筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)が2020―24年に勤務先のワシントン支局時代に住んでいた家の近くには、貨物鉄道3位のCSXトラスポーテーションの線路があり、ディーゼル機関車が100両を超える貨車を牽く列車が頻繁に行き来していました。これに対し、同じ線路を走るアムトラックのワシントンDCと中西部シカゴを結ぶ夜行列車「キャピトルリミテッド」は1日1往復だけです。
アメリカ鉄道協会は、貨物鉄道は2023年に2334億ドル(1ドル=147円で約34兆3100億円)の経済効果をもたらし、業界の直接雇用者数だけで約15万3000人に達すると強調しています。
UPは2024年決算の最終的なもうけを示す純利益が67億4700万ドル(1ドル=147円で約9920億円)に上り、2024会計年度(23年10月-24年9月)の純損益が18億940万ドル(約2660億円)の赤字だったアムトラックとは雲泥の差です。UPの売上高は242億5000万ドル(約3兆5650億円)と、アムトラック(38億3600万ドル)の6倍強に達しました。
アムトラックは1971年、マイカーや旅客機の普及で経営難に陥った各地の旅客鉄道会社20社の事業を吸収して発足しました。もともと採算が厳しかった旅客鉄道事業の寄せ集めのため慢性的な赤字体質で、連邦政府や沿線の州政府からの補助金で赤字を穴埋めするという綱渡りの経営を続けています。
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