「貨物が主役・旅客は赤字」のアメリカで“とんでもない規模”の鉄道会社が誕生へ! なぜそんなに貨物が儲かる?

アメリカの貨物鉄道最大手が、同業4位の会社を買収すると発表しました。その額は約12.5兆円。旅客鉄道の業績低迷とは対照的に、アメリカではなぜ貨物鉄道がそれほど儲かっているのでしょうか。

さらに大型統合が続く可能性も

 UPは、NSを買収すればアメリカの東西43州にまたがる総延長8万キロを超える路線を抱え、約100の港湾をつなぐことになると説明。STBからの承認取得に向け、「アメリカのサプライチェーン(供給網)を変革し、製造業を強化させ、新たな経済成長と雇用の源泉を創出する」とアピールに余念がありません。

 しかしながら、トランプ政権が大企業寄りであっても、アメリカのM&A審査では競合他社や取引先が反対意見を表明するなどの横やりが入るのが一般的です。イギリスの経済紙フィナンシャル・タイムズの2025年8月3日付記事によると、既に7つの荷主団体がUPによるNS買収が実現すれば支配力が大幅に高まり、運賃上昇やサービス基準の低下につながりかねないとの懸念を示しました。

 うちアメリカ化学工業協会は7月30日に発表した声明で「貨物鉄道業界のさらなる合従連衡でアメリカの製造業にマイナスの影響が生じかねないと深く憂慮している」とし、「鉄道間の競争が著しく低下するいかなる合併に強く反対する」と訴えました。また、連邦議会の民主党トップ、チャック・シューマー議員は買収計画について「危険な統合と独占力の道をさらに進めることになる」と警告し、「これはアメリカのインフラの敵対的買収行為だ」と舌鋒鋭く批判しました。

 貨物鉄道2位のBNSFと3位のCSXが統合を検討する可能性も報じられている中で、UPによるNS買収が実現するかどうかは、アメリカの貨物鉄道の「大再編時代」が到来するかどうかを占う試金石となりそうです。

【でけぇぇぇぇ!】これが誕生する「アメリカ最大の鉄道会社」です!(写真)

Writer:

1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。

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